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第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』2

  ★飛矢折★

 ひんやりした感覚に、あたしは目を覚ました。

 ぼんやりした頭を押さえながら、ゆっくりと上半身を起こして、気付く。

 誰かの手があたしの手首を強く握ってて………その手の先を見ると、何故か意識を失っている黒樹君がいた。

 意識を失っているのに、軽く外そうとしても外せないぐらい強くあたしの手首を握っている。

 訳が分からず、周りを見回すと、妙に綺麗な、まるで巨大な錐で穴を開けたかの様なトンネルの中だった。

 壁をよく見ると、コンクリートじゃなくて………岩とか土とか………まるで山の中をそのままくり抜いた様な……こんな何にも支えられていない状態でよく持ってるわね。普通は崩れる様な気がするんだけど…………もしかして!?ここって武霊能力で造られた場所?………あ!武霊の事を思い出せる。と言う事は、少なくともここは星波町?でも、どうしてあたしはここに?………確か頭を怪我した赤井さんを病院に連れってって………そこで…………

 一気に自分がした事を思い出した。

 病院の中から現れた武装風紀委員長の武霊が笛を吹いた瞬間、あたしは彼の命令に逆らえなくなった。

 それはまるで、意識を保ったまま意志を奪われた様なそんな状態だった。

 多分、催眠術とかの一種だと思うけど………武霊が催眠術?………本当になんでもありね……………とにかく、武霊の催眠術で意志を奪われたあたしは、武装風紀委員長の命令のまま星波山のトンネルに行き………そこで……そこであたしは…………

 身体が震えた。

 自分の意志ではなかったとは言え、黒樹君に………黒樹君に、あたしは『禁じ手』を使ってしまった。

 飛矢折流武術は、代々継承者が良いと思った他の武術を『何でも』吸収して自分達の技にしている。

 だから、伝わっている技の中には冗談の様に『対人間用ではない技』があって………その一つがあたしが黒樹君に放ってしまった………『内臓殺し』。

 要は飛矢折流の漫画とかである浸透勁とか、鎧通しとか言われているもの。

 そして、決して『人間相手に使ってはいけない禁じ手』と言われていたもの。

 最初、この技の存在を曾お祖父ちゃんから教えられた時、冗談かと思ってた………だけど、その時の曾お祖父ちゃんの真剣な様子と、実際にあたしが技を習得した事で………この技を使う事を想定した相手がこの世の中にはいる。そう確信してしまった………だって、練習用に使用したコンクリートブロックが粉々になる様な技だよ?そんな技を実際に造らなくちゃいけない相手………曾お祖父ちゃんの話だと、『魔物』と呼ばれている化け物達がいなくちゃ、人間相手に過ぎた技過ぎる。だって、曾お祖父ちゃんの話だと普通の人間に対して使うと………即死………技?…………何で黒樹君無事なんだろう?

 見た所………黒樹君は何ともなさそうだった…………いえ、よくよく口の周りを見て見たら、少し赤黒………血の様なものがふき取った感じで付いている。

 「黒樹君………」

 不安になって名前を呼ぶけど、黒樹君は僅かに胸を上下させるだけで、起きる気配はない。でも、呼吸が出来ているって事は、内臓は少なくとも無事って事になる………思ったより黒樹君は丈夫って事かな?

 よくよく思い出してみれば、内臓殺しを放った次の瞬間、黒樹君はあたしの手首を掴み、PSサーバントの機能を使って電撃を放った。

 それによってあたしは意識を失い………さっき目を覚ました。

 PSサーバントの防御機能で威力が軽減されたのかな?………あれ?そう言えば、今、自分の意志で動けてる………何で解放されているんだろう?

 そんな事を思っていると、不意に背後に気配が現れた。

 条件反射的に裏拳を放つと、

 「ぎゃあー!?」

 と声が聞こえ、気配が消え、少し離れた正面に再び同じ気配が現れた。

 ?………瞬間移動の能力?

 「いきなり何すんの!?危ないじゃない!」

 そう私を非難するいきなり現れた人物に視線を向けると…………知った顔だった。

 それもあまり会いたくない部類の。

 「いきなり背後に現れるからでしょ?」

 「む?確かにそれは言え………ないでしょうが!普通、いきなり裏拳をしてくる女の子なんていないから!怒るよ!ぷんぷん!」

 ……………。

 「何よ?」

 「別に………」

 むくれた様子の彼女に私は思わず苦笑した。

 髪を後頭部でまとめたシニヨンヘアの彼女・マスメディア部部長早見(はやみ)芽印(めいん)は、どちからと言うと可愛いよりカッコいい部類のきれいな顔付きをしてるんだけど………言動が見た目に会ってない上に………

 「ん~それにしてもいい絵よね………いただきぃ♪」

 いつの間にか手に持っていたデジカメであたしと黒樹君を撮る芽印。

 「次の記事は、熱愛発覚!今話題の武霊使い黒樹夜衣斗と瞬殺女飛矢折巴!で決まりね」

 とつぶやきながら写真を撮り続ける芽印。

 芽印はマスメディア部の部長でありながら、条件反射的にゴシップ系の記事に走る癖があって、去年まで同じクラスだったあたしはよく記事にしようとしていた………最近は大人しかったから油断してたとも言えなくはないけど………後で捕まえてデータを消去しなくちゃ………でも、その前に、

 「芽印。さっきまるで瞬間移動でもしたみたいに現れたけど………もしかして、芽印が私達をここに?」

 「せいかぁ~い♪」

 何故かVサインをする芽印。

 ………そっか、芽印がここに…………あれ?でも、

 「芽印の武霊って、瞬間移動能力なんかあったけ?」

 「んふふ。ひ・み・つ」

 ……………。

 「………まあ、でも、ともちゃんなら………いいのかな?」

 芽印の意味深なつぶやきが耳に入り、あたしは眉を顰めた。

 ともちゃんと言われた事を含めての眉顰めだったけど………それを問おうとした時、曲がって見えないトンネルの向こうから気配が二つ近付いてくるのを感じた。

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