第四章『それぞれの裏、さまざまな真実』1
★???★
人間は、
不合理だ。
不統一だ。
不等だ。
不易だ。
不可だ。
不直だ。
不会だ。
不知だ。
不測だ。
不学だ。
不足だ。
不断だ。
不束だ。
不軌だ。
不定だ。
不遜だ。
不快だ。
不堪だ。
不為だ。
不適だ。
だから、人間は、不全だ。
だからこそ、完全にならなくてはいけない。
だからこそ、完全にしなくてはならない。
その為に、必要な事をしよう。
例え何年かかっても、今の人間を完全にしよう。
例え今の人間がそれを望まなくても、やり遂げよう。
それこそが、違ってしまった俺の役割。
それこそが、先へ行き過ぎてしまった俺が生き残る術。
その為に全てを利用しよう。
他人も、社会も、自分自身さえ疑おう。
他人も、社会も、自分自身さえ利用しよう。
他人も、社会も、自分自身さえ偽ろう。
他人も、社会も、自分自身さえ捨て去ろう。
全ては人間を完全なるものにする為に。
★夜衣斗★
気が付くといつのも小さな公園のベンチに座っていた。
っで、俺の両隣にはショートカットとロングヘアの女の子がいて、俺によりかかって寝ている。
………何だか妙に疲れた感じで寝ているな………。
「今回、彼女達はどっちも大変な目にあってたから」
後ろからサヤの、若干気だるそうな声が聞こえてきて、同時に後ろから抱き付かれた。
………いろんな意味で勘弁して………
「しばらく我慢して夜衣斗。そうすれば、私も含めて直ぐに元気になると思うから」
元気になる?…………俺に触れる事で通常より意志力を得られるって事か?………まあ、こういうのも悪くはないから………それはいいんだが………一体何なんだお前達って?喋れるから武霊じゃないとは思うが………。
「それもその内思い出すわ」
思い出すね………………そう言えば、この子達の名前はなんて言うんだ?
「まだないわよ」
は?まだない?何で?
「夜衣斗が付けてないからに決まってるでしょ?」
いや、決まってるでしょって言われても………てっきり俺は、サヤと同じ様に………俺がサヤの名付けたんだけ?
「そうよ」
全く覚えてないが……まあ、その部分の記憶も封じられてるって事か………まあ、その時に名前を付けているものだと思ったが………何でその時、俺はこの子達に名前を付けてあげなかったんだ?
「だって、あの時、この子達はいなかったもの」
いなかった?………それはつまり、少なくともこの子達は運命を変える選択そのものじゃないって事か………一体運命を変える選択ってのは………俺は何を与えられたんだ?この子達が生じる何かとか?
俺の問いにサヤは何も答えない。
………答えられないのか、答えてはいけないのか…………何にせよ。現時点で俺が知る必要のない………もしくは、知るとまずい事なんだろうが…………なんかそんなのばっかだな………
「どうでもいいだわけど」
不意に下から美魅のけだるげな声が聞こえてきた。
姿は見えないな………って、ベンチの下か。
「夜衣斗は随分呑気にしているだわね………もしかして、どうしてここにいるか覚えていないだわね?」
どうしてここに?………あ!そう言えば、俺は飛矢折さんに!?あの後どうなったんだ!?
「夜衣斗が意識を失って、外との繋がりが断たれてるだわから、ここからだとどうなったかは分からないだわよ。あたいが外に出て確かめに行けば確認は出来るだわけど………あたいも疲れてるだわね。今は勘弁してほしいだわよ」
分かってるって………あれだけの事を短時間にしたんだ………俺だって疲れてる………まあ、俺がここにいられるのだから、少なくとも無事ではある事は間違いないだろう…………最後の状況から考えて、統合生徒会長が何とかしてくれたのかもしれない。まあ、起きたらまた捕まってるって可能性もなくはないが…………それにしても………生徒会長、何であの場所にいて………飛矢折さんが危険だって知ってたんだ?そもそも、飛矢折さんは………まあ、普通に考えれば武霊能力で操られてたんだろうが……………はぁ………次から次に厄介な事が起きるな…………。
思わずした大きなため息に、サヤは無言で俺の頭を撫でた……………悪い気はしないが………やっぱり、色々な意味で勘弁して………