第三章『奪われたオウキ』83
★???★
手に引き続き、足先まで消滅し始めた頂喜武蔵を体内に入れながら、ガチャポンマンは次の攻撃に移った。
背に異様な形になったウィングブースターを生やして飛行し、サーバント達が突撃する空中に向かって突撃する。
キバはガチャポンマンが近付く間にオーバードライブの再構成を開始。
だが、ウィングブースターにより飛行速度が上がったガチャポンマンは、瞬く間にサーバント達の戦場を抜け、キバに近付いた。
オーバードライブの再構成が間に合わないキバは、黒いホーンブレイドを展開し、接近したガチャポンマンに向けて振るう。
ガチャポンマンは、自分に向けられて振られたホーンブレードを避けようともせず、更にキバに接近。
ホーンブレードの刃が、ガチャポンマンの右腕を斬り落とす。
それでもガチャポンマンは接近を止めず、終にはキバにその左腕が届くとこまで接近した。
キバは前足でガチャポンマンを蹴り飛ばそうとするが、その足をガチャポンマンに掴まれてしまう。
瞬間、ガチャポンマンの手から超振動が発せられ、まだオーバードライブの装甲に包まれていなかったキバの足を粉砕した。
更に、斬られた右腕が瞬時に生え、キバは避ける間もなく喉を掴まれてしまう。
そして、右手から超振動が発せられた。
★夜衣斗★
どうも精神世界と言うのは、非常に不安定な世界らしく………今の頂喜武蔵の精神が不安定になっていると言う可能性もあるが………ふっと注意を他にそらすと、魔力の小川を直ぐに見失ってしまう。
それは、常に精神世界の光景が変化するのが原因なんだが………更に言えば、その変わる光景の中に………多分、頂喜武蔵の過去の記憶なんだろうが………様々な頂喜武蔵が現れ………正直、眉を顰める様な事ばかりしていた。
小学生ぐらいの頂喜武蔵が女性教師に暴力。中学生ぐらいの頂喜武蔵がサラリーマンを恐喝。高校生ぐらいの頂喜武蔵が警察官を拷問………あらゆる年で、あらゆる犯罪をし、そられ全てに快楽を感じている様に、笑みを浮かべている。楽しそうに………
どの年の頂喜武蔵も、体格が年齢に合わない馬鹿みたいなでかさなので、一瞬どれくらいか迷うが、格好と周囲の状況から大体は推測出来るが………恵まれた体格のせいで、こんな奴になったんだろうか?………いや、恵まれた体格や才能を持って生まれたからと言って、全員が全員そうなるわけじゃない………まあ、今まで俺の周りにそうやからが居なかった(もしくは気にしてなかった)から………それが真実かどうかは分からないが………一般論だろう。
唐突に、さきほどまでいた廃工場らしき光景になる。
思わず立ち止まり、周囲を見回すと、頂喜武蔵とその手下達に囲まれるひよりさんがいた。
ひよりさんの様子からして、頂喜武蔵に忘却剤を服用される前、っと言うより、捕まる前の様だった。
そこで俺は先ほどとは違う別の意味で眉を顰めた。
俺はてっきり星波町の外で捕まり、星波町に連れてこられたと思っていたんだが………
そんな事を思っていると、ひよりさんは更に驚く事をした。いや、なった。
何をしたのか、ひよりさんの姿がすうっと消える。
武霊能力!?いや、武霊を出している様子はなかった様な………
驚く手下達を尻目に、頂喜武蔵はガチャポンマンを具現化し、あの重力怪獣にし、周囲の重力を増加した。
部下達が重力増加に巻き込まれて倒れる中、小さな悲鳴が何もない所から聞こえ、そこに倒れるひよりさんが現れる。
笑う頂喜武蔵に、青ざめるひよりさん。
そこで、光景が変わった。
………まあ、あそこで光景が変わらなくても………続きは容易に想像出来る。
また、頂喜武蔵対する怒りが再燃し始めた。
ここで落ち付かせないと……………この場所で何をするか分からないな…………。
俺は怒りを鎮める為に、深呼吸をする。
美魅にここに入る前に、
「心の中の何かを壊したり、触ったりする際は注意するだわよ。そこにあるものは全て、その者の心を構成するものだわよ。だから、何かをすれば、必ず潜った相手に影響が出るだわよ。あたいは、それを利用して、星波町の人間の不安とかを取り除いたりしてたわだけど………まあ、今はそんな事は関係ないだわね」
っと言われていた。
だから、迂闊に触ってないし………怒りにまかせて周囲を破壊する訳にはいかない。
ここに入った目的は、あくまで、ガチャポンマンの核を破壊する事……………って、今気付いたが………武霊の核ってどんな形をしているんだ?
…………まあ、俺の心の中を照らし合わせれば…………女の子の姿をしているとか?………いや、そもそも、あの女の子は、喋っていた。武霊は喋れない事を大前提にすると、あの女の子達は武霊の核である可能性は低い気がする………じゃあ何なのか?って話になるが…………まあ、先に進めば分かる………か?
そう思った俺は、魔力の小川を辿る事に集中。
そして、現実世界でキバが喉を掴まれ窮地に陥った時、俺の目の前に駄菓子屋が現れた。