第三章『奪われたオウキ』82
★夜衣斗★
二度目の水柱が上がると同時に、俺は既に展開していたドッペルゲンガーサーバントで自分の偽者を作り、PSサーバントのステルス機能で姿を消しつつ二体の戦場に接近。
途中、とんでもない攻撃の連続に肝を冷やしつつ、何とか気付かれずにごちゃまぜガチャポンマンの背後に接近出来た。
キバ!俺が戻るまで、ガチャポンマンを引き付けて置いてくれ。
心の中でそう思うと、キバは応えてくれた気がした………どうも向こうが言葉を使えないと不安と言うか、不便と言うか………まあ、そんな事より、行くぞ!美魅!
(了解だわよ。夜衣斗)
美魅の了承と共に何だか身体が酷く軽くなった感じがした。
………例えるなら、全ての物理現象のくびきから解放されたと言うか………
(飛び込むだわよ!)
ステルス機能を解き、一気にごちゃまぜガチャポンマンの背中、頂喜武蔵の背中に向けて、飛び込んだ。
次の瞬間、
俺は異様にぐにゃぐにゃしている町中にいた。
★???★
夜衣斗がガチャポンマンに入った瞬間、一瞬だけその動きが止まった。
その一瞬を逃さず、キバはシールドサーバント数機をガチャポンマンとの間に展開。
同時にシールドサーバントをオーバードライブさせる。
動きが止まっていたガチャポンマンが、動き出し、光線を吐き出す。
だが、今度の光線は黒い、オウキのオーバードライブの力も加わった光線で、オーバードライブしたシールドサーバントでも耐え切れず、貫通してしまう。
それでも貫通まで僅かな間が生じ、その間にキバはウィングブースターを再構成し、黒いシールドを影に光線の射線軸から逃れた。
光線から逃れたキバを確認したガチャポンマンは、全身にオウキの簡易格納庫を作り、歪なサーバント達を放出する。
キバもサーバント達を放出し、オーバードライブさせた。
空と海上でサーバント達に囲まれ対峙する。
「ああああぁぁぁああああぁああ!!!」
ガチャポンマンの叫びと共に、歪なサーバントがキバに向けて突撃を開始する。
それを迎え撃つキバのサーバント達。
次々と対消滅するサーバント達。
そして、ガチャポンマンの中で、意識を失った頂喜武蔵の身体に更なる異変が起き始めていた。
★夜衣斗★
異様にぐにゃぐにゃした町の中を俺は歩いていた。
ちなみに、今も俺は猫耳状態。
少し違うのは、俺ごと誰かの心の中に入るのはかなりの負担らしく、心の中に入って早々、
「これはちょっと辛いだわね。集中しないと維持出来そうにないだわよ」
そう言って、以降何を言っても返事しなくなった。
………まあ、何であれ手探りで進むしかない事は事前に話してたし………まあ、
………何と言うか………こうも俺の心の中と違うとは………いや、考えて見れば、俺のあの場所は特殊な場所なんじゃないのか………きっとあそこ以外の俺の心は………こんな感じなんじゃないのか?
歩いていると、次の瞬間には町の光景から、どこかの校舎らしき中になったり、山の中になったり………そして、また町に戻る。
どうやら町が基礎っぽいが………ん〜?なんか………どの光景になっても、ちょろちょろと水が地面に流れているんだよな………これって、もしかして………魔力か?………って事は、この水の流れの先に魔力孔が?……………俺のと全然量が違うな………そう言えば、君は莫大な量の魔力を得るだろうねって謎の老人が言っていたな……………って言うか、ガチャポンマンの本体は何処にあるんだ?それらしきものは辺りにないし…………考えて見れば、頂喜武蔵の肉体が武霊に吸収されていると言う事は、頂喜武蔵も直接的な接触を自身の武霊にしている可能性が高い様な………っで、あの様子からすると死にかけていると考えるのが自然だな………そして、さっき俺が死に掛けた時、三途の川らしき所に勝手に行っていた…………だとすると、もしかしたら、この先に?
視線をちょろちょろと流れてくる水の先に向ける。
………流れの先は、『外』と考えると、この先は『内』か………行ってみるか………あまり長時間は、キバも美魅も、どっちも持ちそうにないしな………。
俺はそう思い、水か流れてくる方向へと歩みを向けた。
PSサーバントの機能は、この精神世界の中でも有効らしく、外の、キバ対ガチャポンマンの戦いの様子は脳内ディスプレイで見る事が出来た。
その映像から、キバが少しずつ押され始めているのが見て取れ………そして、頂喜武蔵に更なる変化が起きている事に気付き………俺は走り出した。
ガチャポンマンの体内で意識を失っている頂喜武蔵の『足が、手に引き続き消え始めていた』からだ。