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第三章『奪われたオウキ』81

  ★???★

 「あたいは何の為に夜衣斗の心の中に戻ったんだわね………」

 っと美魅は夜衣斗の心の中・公園のブランコに座りながらたそがれていた。

 「自分の口調も忘れて焦ってたあたいがアホみたいだわね」

 夜衣斗がキバを手に入れば、戦闘能力も特殊能力も劣る美魅の出番はない。

 そもそも、戦いの場は空中戦に切り替わっている。

 これでは飛行能力のない美魅はますます出番がない。

 だからこの場に留まり、たそがれているわけだが………

 美魅の隣のブランコには、サヤが座っており、美魅のつぶやきを面白そうに笑った。

 その反応に、美魅が疑問の眼を向けると、サヤは、

 「私は言わなかった?あなたの魂は契約により夜衣斗に繋がっている。そして、あなたは何?って?」

 再びの問いに、意味が分からない美魅は首を傾げるしかない。

 だが、その時、夜衣斗の心の叫びが公園に響き渡った。

 「本当に頂喜武蔵を………殺すしか手段は無いのか!?」

 たそがれていたせいで、外の状況をよく見ていなかった美魅は、何故夜衣斗がそう絶叫したか分からなかったが、だが、その瞬間、美魅はサヤの問いの意味を理解した。

 そして、大声で叫んだ。

 「あるだわよ!あるだわよ夜衣斗!殺さずに済む手段が!」


  ★夜衣斗★

 美魅の言葉を頭の中で理解した瞬間、俺はキバから飛び降り、

 「頼むキバ!時間を稼いでくれ!オーバードライブモード緊急解禁!」

 俺の命令に、一気にオーバードライブモードになったキバは、突撃してくるガチャポンマンに突進。

 激突する二体。

 はぐれ化をしているからなのか、先程は脆かったはずのガチャポンマンが、オーバードライブ中のキバの体当たりを平然と受け止めた。

 よく見ると、表面に何か力場の様なものが発生しているらしく、キバはガチャポンマンの身体に触れる直前で止まっている。

 一瞬の拮抗の後、不意に二体が急降下し始めた。

 キバが覆いかぶさる様にして落下にガチャポンマンを巻き込んでいる様からして、ガチャポンマンが重力増加を使ったのは間違いないだろうが………どれほどの重力が増加されているのか、瞬く間に海に落ち、大きな水柱を上げる。

 ………あんな速度で落下して、頂喜武蔵は大丈夫なのだろうか………正直、どうでもいいと言えばどうでもいいが………いや、よくないな…………ああもう!何であんな奴の命をどうこう考えなくちゃいけないんだ!………とにかく、美魅!

 「はいだわよ」

 殺さずに済む手段って言うのは?

 「説明するより、実際にやってみせるだわよ」

 やってみせる?

 その疑問の答えは………直ぐに出た。

 何だか妙な、むずむずする感覚を頭と尻に感じ………条件反射的に頭に手をやった。

 なんか頭にあった。

 眉を顰めつつ、尻にも手をやると………。

 こっちにもなんかあった。

 …………………。

 近くを飛んでいたスカウトサーバントに俺の姿を取らせ、映像を送って貰い………俺は、

 「なんじゃこりゃぁああぁあぁぁ!?」

 っと叫んでいた。


  ★???★

 夜衣斗の様子をずっと見ていた呼衣は、夜衣斗の身に起きた唐突な変化に、唖然としていた。

 そして、少しずつ肩を震わせ、終には堪え切れなくなったのか、大爆笑し始める。

 どうやら今の夜衣斗の姿がつぼだったらしく、しばらくまともに夜衣斗の姿を目で追えなくなる呼衣。

 呼衣の前にある鏡には、『白い猫耳としっぽを生やした夜衣斗』が映っていた。


  ★夜衣斗★

 …………美魅さん?

 「に……っぷ………似合ってるだわよ」

 嘘つけ!何やってるんだあんたは!?直ぐに元に戻せ!今直ぐ戻せ!

 「お、落ち付くだわよ。これはただの猫化じゃないだわよ」

 はぁ!?俺にはふざけている様にしか見えないが!?

 「思い出すだわよ夜衣斗。あたいは何だわよ?」

 それが何だって言うんだ?そんなの化けね…………心に潜る化け猫………まさか!?

 「そう。そのまさかだわよ。あの契約書は、互いの力を貸し合わせるものだっただわよ。つまりだわよ。夜衣斗に、あたいの力を貸す事も出来るんだわよ。そして、その証が、今、夜衣斗の頭とお尻にあるあたいの耳と尻尾だわよ」

 ………つまり………頂喜武蔵の心の中に潜って、武霊の核を『直接壊しに行ける』って事か!


  ★???★

 重力増加により海の中に落とされたキバは、落下に巻き込んだガチャポンマンの頭部に噛み付き、振り回していた。

 振り回されながらガチャポンマンは身体から強烈な電撃を発生させる。

 だが、オーバードライブモード中のキバにはその電撃は大してダメージにはならない。

 しかし、電撃により海水が分解され、水素と酸素が大量に生じ、そこにガチャポンマンは自らの身体に炎を生じさせた。

 瞬間、生じる大爆発。

 海上に二度目の大きな水柱が生じ、海中では強烈な爆発の影響で互いに違う方向へ吹き飛ばされるキバとガチャポンマン。

 ガチャポンマンは吹き飛ばされながら、今度は周囲の温度を一気に下げ始め、周囲の海水を急激に凍らせる。

 海水が凍る気配を感じたキバは、氷に閉じ込められる前に海から飛び出し、空に逃げた。

 空にキバが逃げると同時に、既に出来ていた氷が割れ、無数の鋭い錐になってキバへと一斉に射出される。

 キバは氷の錐を避ける事も防ぐ事も出来ず当たってしまうが、オーバードライブの装甲には傷一つ付かない。

 だが、氷の錐の影響で飛行進路が変わり、その進路に向け、海中から飛び出したガチャポンマンが極大の光線をまるで剣の様に振るい吐く。

 一瞬光線に巻き込まれ吹き飛ぶキバ。

 光線により片翼が壊れたウィングブースターを何とか使い体勢を整えるキバ。

 キバの全身の黒い装甲のほとんどが吹き飛ばされ、本来の装甲である白銀が見える状態になっていた。

 そのキバに追い打ちを掛ける様に再度光線を放とうとガチャポンマンがその口を大きく開けた時、その背後に唐突に夜衣斗が現れる。


 ガチャポンマンの背後に夜衣斗が現れた事を目撃した呼衣は、驚きで目を見開いた。

 今まで夜衣斗は空にいた。

 いや、今でも空にいる。

 つまり、空にいるのは偽者と言う事。

 「いつの間に………」

 そうつぶやきながら、呼衣には心当たりがあり、いつもの自分らしくない先程の大爆笑を思い出していた。

 「………あれは卑怯よね」

 などとつぶやきながら、現れた夜衣斗が何をするか見ていた呼衣のその目が、再び大きく見開かれた。

 何故なら、夜衣斗がガチャポンマンの背中に飛び込み、まるで水の中に入ったかの様にその『背中に入った』からだ。

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