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第三章『奪われたオウキ』80

  ★夜衣斗★

 重力操作を基点とした様々な攻撃。

 電撃や炎・風に水。

 ありとあらゆる攻撃が使える。

 ………確かにそれは厄介だが、それをうまく扱えなければ、それほど脅威ではない。

 多分だが、あのごちゃまぜ状態を頂喜武蔵はそう頻繁にやってはいなかったのだろう。

 だから、俺の反撃が思いのほかあっさり決まった。

 ソードサーバントにより開いた場所に突っ込んで撃った両手の拳銃には、着弾の瞬間に人を気絶させる電流を流す『電撃弾』が装填されており、それによって頂喜武蔵は気絶。

 電撃により短い悲鳴を上げ痙攣後、身に纏っていたごちゃまぜ武霊は消え、自然落下し始める頂喜武蔵。

 シールドサーバントの柔らかい液体モードシールドで受け止めさせ………俺はほっと一息ついた。

 終わった……………終わったんだよな?……………いや、まだか………こいつに武霊封じの留置所に入れ………ん?

 何となく気絶している頂喜武蔵を流し見た時、妙な違和感を感じ、視線を頂喜武蔵に戻した。

 最初、違和感の正体が分からず、眉をひそめていたが、だらりとシールドの上に置かれているその両腕の先………その両手が………消えていた。

 しかも、その消えている部分は、徐々に徐々に拡大している様だった。

 何だこれ!?何なんだ………これは?

 訳が分からず、恐る恐る消えた手の場所に手を近付けると………やっぱり何もない。

 初めて見る現象だが………やっぱりこれも武霊が原因だよな…………だとしたら、ヒーラーサーバントじゃどうにもならないか………いや、流石にこのままはヤバいよな………

 そう思ってヒーラーサーバントをキバに出させようとした時、更なる変化が起きた。

 じわっと半透明の何かが頂喜武蔵の身体からで始まる。

 それを見た時、ぞわっと背筋が寒くなると共に、ある現象を思い出した。

 それは………はぐれ化。

 死んでもいない、一辺に出てきてないなど、明らかに見た事があるはぐれ化と違うのに、何故かそれを思い出した。

 ほぼ同時に、オーバードライブモードを解いたキバが俺の下から接近し、無理矢理俺を背負い、バイクモードになってこの場から離れる。

 俺はそれに文句を言うより早く、PSサーバントの後部カメラに、頂喜武蔵が意識を失ったままレベル3になったのが映り………そのまま立ち上がり、身に纏う半透明のガチャポンマンにされるがままになっている………意識を失ったままの頂喜武蔵を見た。

 ………これは、どう見ても、武霊の暴走。別種のはぐれ化と考えるべきか………これを起こしている要因は、多分、勘だが、あの武霊使い強化薬なんじゃないか?………っと言うか、こんなはぐれ化があるなら美羽さんだって言うだろうし、前例がないなら、それ以外の要因は………多分、ない。

 そう思った時、ガチャポンマンは、自らの身体をたたき割り、再びあのごちゃまぜ状態になろうとしていた。

 まずい!

 そう思って、反射的にキバのまだ収納していなかったガトリングガン使わせようとしたが、そこではっと気付いた。

 今のガチャポンマンは、頂喜武蔵の命令で動いていない。

 ガチャポンマンの意志で、暴走した武霊の、はぐれ武霊としての意志で動いているとするなら………牽制攻撃・気絶攻撃は無意味。

 そして、


  ★???★

 レベル3の状態で、はぐれ化を起こし続けるごちゃまぜ状態のガチャポンマン。

 その壊れた本能のまま逃げる夜衣斗を追い始める。

 始まった追想劇を遠見の鏡越しに見た呼衣は、浮かべていた笑みを更に深める。

 「さて、どうします黒樹夜衣斗?既に気絶している者を気絶させる事は出来ない。そして、そのままにしておけば、町に絶大な被害を出す」

 キバに乗って逃げる夜衣斗の姿に、聞こえないと分かっていながら問い掛ける呼衣。

 「答えは決まってますよね?」

 逃げた先が町の上空になる事に気付いた夜衣斗が、その場で急停止し、反転。

 呼衣はその夜衣斗が、拳を強く握り、うつむく姿を見た。

 「そう。『殺すしかない』。そうでしょ?黒樹夜衣斗」


  ★夜衣斗★

 ガチャポンマンを止めるには、頂喜武蔵を殺すしかない。

 ぐらっと目の前が揺れた気がした。

 ごちゃまぜ状態になったガチャポンマンがこっちを追い出したので、キバが急加速した影響かとも思ったが………いや、そんな思考で逃げるべきじゃないな………意味のない逃げでもあるし………正直に言えば、殺すと言う考えは、俺の中にあっても、実際にそれを実行に移す現実感は今までなかった。

 何故なら、今の今まではあくまでそれは選択肢の一つであり、選ばなければしないで済む話だったからだ。

 だが、今は…………他に選択肢がない。

 あまりの現実に、吐き気がして、くらくらしてきた。

 はぐれ化を起こしているとはいえ、武霊の核はあの状態からするとまだ頂喜武蔵の中にある。

 例え周りだけを削いだとしても、きっと直ぐに頂喜武蔵の中から新たに具現化する。

 キバの進行方向に町が見えた。

 このままだと町にレベル3のはぐれ化を起こしているガチャポンマンを誘導してしまう。

 っく!止まれキバ!

 キバは俺の命令に従い止まり、俺が何か命令するより早く反転した。

 迫るごちゃまぜガチャポンマン。

 その中にある頂喜武蔵の両腕の消滅が、更に進んでいるのがはっきりと見えた。

 きっと、このまま何もしなくても、頂喜武蔵は………死ぬ………いや、もしかしたら、もう死んでいるのかもしれない。

 ………くそ!くそ!本当に………本当に頂喜武蔵を………殺すしか手段は無いのか!?

 うつむき、ぎゅっと拳を握りしめ、俺は心の中で絶叫していた。

 そして、迫るガチャポンマンに向けて、攻撃命令を出そうとした時、

 「あるだわよ!あるだわよ夜衣斗!殺さずに済む手段が!」

 そう言う美魅の声が唐突に聞えた。

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