第三章『奪われたオウキ』79
★???★
至近距離で撃ち込まれた弾丸は、僅かな武霊の装甲を貫通し、頂喜武蔵の身体に着弾。
瞬時に、弾丸から電流が発生し、頂喜武蔵の身体を駆け巡る。
「っが!」
駆け巡る電流により、意識が遠のく頂喜武蔵。
気が付くと、頂喜武蔵はどこか見覚えのある駄菓子屋の前にいた。
「んだこりゃ?」
そこは頂喜武蔵が頂喜武蔵が子供の頃に通っていた駄菓子屋。
そして、快楽の原点。
ここで頂喜武蔵は同世代の子供達を相手に、
暴力を
盗みを
脅しを
ありとあらゆる負の快楽を覚えた。
本能が快楽の奴隷となり、理性が快楽を更に求める様になった。
だからこそ、ここが頂喜武蔵の原点。
そして、武霊のイメージの基。
頂喜武蔵は周りを見回し、直ぐにここが現実の世界ではないと理解した。
何故なら周囲の光景が所々歪み、揺れているからだ。
「っは!さしずめ心の世界ってか?」
なんとなしにそう口にし、頂喜武蔵は視線を駄菓子屋の前に向けた。
そこには、幾つかのカプセルトイが置かれている。
頂喜武蔵はこれをやる為に、最初に暴力を振るい、返さない借金を同世代の子供に強要した。
まさしく、頂喜武蔵が頂喜武蔵としてなる切っ掛けのカプセルトイ。
「………ッチ!一体何だってンだよ」
現状が訳が分からず過ぎる頂喜武蔵は、なんともなしにそのカプセルトイに手を乗せた。
瞬間、手の感覚が消える。
「あ?」
視線を自分の手に向けると、そこには何もなくなっていた。
そして、先程までカプセルトイがあった場所に、自身の武霊ガチャポンマンがいつの間にかいる。
「こいつはど」
どう言う言う事だ?
そう言おうとした頂喜武蔵より早く、唐突にガチャポンマンが、
「ああぁあああああああああああぁああああ!」
叫び出した。
耳をつんざく、叫び。
それは、まるで苦しみ、自身の主である頂喜武蔵に助けを求めているかの様な叫びだった。
実際、叫びながら、ガチャポンマンは、ゆっくりとその身体を頂喜武蔵に近付け、手を伸ばす。
「うぜぇんだよ!」
ガチャポンマンから差し出されるその手を、頂喜武蔵は残った手で振り払おうとした。
だが、ガチャポンマンの手に頂喜武蔵の手が触れた瞬間、まるで吸収されるかの様にその手が消える。
「何だってンだ?何だってンだよ!?」
両手を失った頂喜武蔵はそこで初めて恐怖を感じた。
そして、思い出す。
手下達が、自身の武霊に喰われる姿を。
今消えた頂喜武蔵の両手は、まさしくそれと同じに見えた。
じりじりと近付くガチャポンマン。
恐怖を感じながら、背を向けずに後ろにゆっくり下がる頂喜武蔵。
背を向けた途端、一気に襲い掛かられる気がしたからだが、それにより頂喜武蔵はガチャポンマンの姿をよく見る事になり、その身に起きている異常を発見することになった。
ガチャポンマンの身体には所々にひびが入り、そこから水の様なものが絶えることなくあふれ出しており、その水が出る度にひびを増やしていた。
「なんなんだ!何が起きてるって言うんだ!?」
「やっぱりあいつの武霊も暴走し始めましたね」
複数ある遠見の鏡の一つで、精神世界の頂喜武蔵を見る呼衣。
「エネルギー源を強制的に魔力に切り替えさせたのがいけなかったのかしら?それとも急激に増えた供給量に耐えられなかったのかしら?」
冷たい目を相変わらずだが、どこか楽しそうに自問している。
「壊れた場所を修復しようと本能的に本来のエネルギー源である意志力を求めている事と、壊れ始めた所から魔力が流れ出している事からして、そのどちらでもある可能性がありそうね………問題は暴走する時間差とその具現化レベルかしら?最初のは、早々に耐え切れなくなって、レベル4になり暴走。こっちはレベル3を維持し続け、意識を失った瞬間に暴走………ふふ。面白いわ」
そう言って、冷たい目のまま笑みを浮かべた呼衣は、別の鏡に視線を映す。
そこには夜衣斗と、気絶し、シールドサーバントに寝かされている現実世界の頂喜武蔵の姿が映っていた。
「実験データは十分。後は、回収か処分かだけれども………どうやら、あなたが処分してくれる事になりそうよ」
呼衣が聞こえるはずのない言葉を夜衣斗に向けて言った時、頂喜武蔵の身体に変化が起きた。
精神世界同様に両手が消え、そして、