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第三章『奪われたオウキ』78

  ★夜衣斗★

 やたらと喜んで襲い掛かってくる頂喜武蔵。

 ………一体何なんだこいつ?………訳が分からない。

 まともに近付けば重力操作能力に捕まるので、逃げる。

 キバと二手に分かれてだ。

 当然、頂喜武蔵は俺を追ってくるが、その背後をキバに撃たせるので、こっちを追う事に集中出来ない。

 その間に、俺は頭の中で中々纏まらない考えをまとめる。

 「方針を変える」

 ………まあ、確かにそう言った。

 だが、後の「死ね」は…………ただのはったり。

 当然、頂喜武蔵を殺す気はさらさらない。

 殺す気でかからないと、ああいう奴は、牽制する為の攻撃が牽制にすらならないし、今の頂喜武蔵なら、あの程度の攻撃を繰り出しても、防ぐか避けるかすると思い、それに賭けた。

 実際に、その賭けはうまくいき、 頂喜武蔵はキバの攻撃を警戒している。

 …………まあ、あれで死んでも………っと思う心は無いわけではないが………

 まあ、そうは思っても、大原亮が現れないなら、方針を変える必要はある。

 俺が頂喜武蔵をどうにかする方向にだ。

 取れる手段は二つ。

 一つは身に纏った武霊を貫通する攻撃をし、気絶させる。

 ただし、この場合は、殺さない手加減が必要になり、ある程度疲弊させるか、油断をさせないといけない。

 もう一つは…………いったん殺し、ヒーラーサーバントで治療する。

 これなら一様………人殺しにはならない。ならないが、いったんであろうと殺しは殺しだ。それが俺にどんな影響を与えるか………正直、悪い予想しか浮かばない。

 あんなクズ野郎の為に、毎晩うなされるなんてごめんだ。

 それに、この場合は、あのごちゃまぜの武霊のはぐれと相手をしなくちゃいけない事になる。

 あれのはぐれ………まあ、何にせよ。こっちは最後の手段だ。

 そもそも、あの状態の頂喜武蔵に攻撃を通すとなると、下手をしたらヒーラーサーバントが使えないほど肉体が破損する恐れが強い。

 …………どっちにしろ難しいなら、何とか気絶させる手段を選ぶべきだろうが………。

 後部カメラで追ってくる頂喜武蔵の姿を注視する。

 ………何度見ても気持ちの悪い姿だな………思わずため息が出る。

 あれがあいつの心を形作っているイメージの一つとなると………頂喜武蔵の精神がどんなものか、想像知れる。

 強引に他人を屈服させ、壊し、その様子を楽しむ。

 ………これが快楽の悪意だと言うのなら………。

 ふっと、子供が無邪気にアリの巣を潰す様子や、昆虫の羽をむしる話を思い出した。

 ああいう事をする子供が、そのまま成長した姿って事か?

 ……………ってか、今はそんな事を考えている場合じゃないな。早く手を打たないと、こっちの限界が………それにしても………全然意識のぐらつきが起きないな………さっきからオーバードライブとか、結構無茶しているはずなんだが………本当にどう言う事なんだ?これは?………まあ、それこそ今考えるべき事じゃないか。何であれ、こっちが有利な、奴が武霊使い強化薬を使っているなら、イーブンな条件だ。

 さっきから終わりだ終わりだと言って置きながら、一向に終わらないのも何だし………本当に終わらせるぞキバ!


  ★???★

 それまで逃げ回っていた夜衣斗が唐突に反転し、頂喜武蔵に向け二丁拳銃を連射しながら突撃してくる。

 撃ち込まれた銃弾の弾道を重力操作で外し、突撃してくる夜衣斗に向け、電撃の塊を吐く。

 高速で迫る電撃の塊を、シールドサーバントで防ぎ、更に接近する夜衣斗。

 同時に、キバもホーンサーバントを伸ばして、接近し始める。

 今までの戦い方から夜衣斗が無策で突っ込んでくるとは思えなかった頂喜武蔵は警戒して、一人と一体を近付けさせない為に、重力増加の能力を発動させた。

 その瞬間、上空から何からが降り、頂喜武蔵が身に纏っている武霊を切り裂き、強烈な電流が生じる。

 途端に激痛に襲われる頂喜武蔵。

 レベル3は武霊を身に纏っている分、具現化率が高くなり、より武霊の本来の力を発揮出来るとされている。だが、反面、身に纏っていると言う最も近い具現化の仕方をしているせいか、その感覚まで武霊使いは共有する事になる。

 更に今の頂喜武蔵は借りている全ての武霊を無理矢理具現化していた。

 その為、通常の具現化よりその身体は脆くなっている。

 切り裂かれた場所から更にひびが入り、頂喜武蔵その痛みまで感じ、絶叫した。


  ★夜衣斗★

 俺が唐突に頂喜武蔵に接近して注意を惹き付けている間に、キバからソードサーバントを射出させ、気付かれない様に頂喜武蔵の上に展開。

 そして、キバと一緒に更に接近して頂喜武蔵に重力増加の能力を使わせる。

 重力増加と同時に、増加した重力に身を任させてソードサーバントを急降下。

 電撃を内包した刃を展開したソードサーバントは、狙い違わず、頂喜武蔵が身に纏っているごちゃまぜ武霊を切り裂き、電撃を放出するが、少し浅かったらしく、頂喜武蔵まで電撃が到達しておらず、気絶しない。

 だが、レベル3であるせいか、切り裂かれたごちゃまぜ武霊の痛感を感じたらしく、絶叫。

 一瞬、怯んだが、重力増加が解かれた瞬間を見逃さず、俺はそのまま突撃し、急速に再生する武霊の傷口に両手の拳銃を突っ込む。

 場所は丁度、頂喜武蔵の胸の上。

 「てめぇ!」

 痛みで顔を歪めている頂喜武蔵が俺に凄まじい表情を向ける。

 三度目の正直!

 「………これで終わりだ頂喜武蔵!」

 俺はトリガーを引いた。

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