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第三章『奪われたオウキ』75

  ★夜衣斗★

 「てめぇ………いつこんなサーバントをくっつけやがった!」

 その頂喜武蔵に俺は思わず苦笑した。

 雲から出る際、俺はキバにハッカーサーバントを出させ、オウキに密かに取り付かせた。

 頂喜武蔵も雲により視界が塞がれているから………まあ、うまくいったらラッキーかな?って程度に放ったんだが………向こうも視覚に頼った戦いをしているって事なんだろう……考えて見れば、向こうはただたんに喧嘩慣れした不良だし……もっとも取り付かせる事が出来たからと言って、ハッカーサーバントの機能はそれほど強力なものじゃない。普通は、人格のない機械に対してのみに使われる。だから、オウキにハッキング出来たとしても、せいぜいスカウトサーバントから送られてくる映像を入れ替えるぐらいしかできなかった。

 まあ、おかげで、ウィザーサーバントを奴に気付かれずに使えたが………本当に天候を操作出来るんだな………何と言うか、それを自分がやってるって言うのが信じられないと言うか………

 晴れた星波町を見回し、俺は何とも言えない感情に襲われていた。

 そして、町を見回した時、ある事に気付く。

 晴れている範囲が、星波町の境で止まっている事をだ。

 ………武装守護霊の力の範囲って事なんだろうが………これも忘却現象の一種か?………考えて見れば、武霊によって大掛かりな・大規模な現象とかが起こされれば、町の外からもそれが確認出来るはずだよな………なのに騒ぎらしきものが起こっていない………っと言う事は、忘却現象の影響範囲は、かなりの広範囲に及んでいるって事になるよな………一体何なんだか………まあ、俺なんかに分かるはずはないか………第一、考えている暇なんてない。

 視線を下に向けると、頂喜武蔵がオウキをオーバードライブにして迫っていた。

 俺はため息一つ吐き………視界が晴れて、向こうが不利になったって言うのに………まあ、それが分かっててもって事か?………さて、

 「………そろそろ終わりにしようか?」

 俺の問い掛けに、隣にいたキバが頂喜武蔵に向かって突撃を開始した。


  ★???★

 「勝負あったようね」

 酷くつまらなそうに呼衣は頂喜武蔵の突撃を見ていた。

 「でも、これでは十分な実験データが取れないわね………………仕方がない………」

 メガネを押し上げ、ため息一つ。

 「現れなさい『無限万華鏡』」

 その呼衣の呼び掛けに、巨大な万華鏡が背後に具現化し、宙に浮き、高速回転し始めた。



 頂喜武蔵は自分が不利な状況に置かれている事を自覚していた。

 だが、だからと言って、降参する様な男ではない。

 突撃していたキバのホーンブレードを刀で受け止める。

 空中で鍔迫り合い状態になる一人と一体。

 (ッチ!こっちはレベル3だぞ!?なんで力が拮抗しやがる………それだけ向こうのパワーが強いって事かよ!?)

 通常、レベル1とレベル3の具現化には圧倒的な力の差がある。

 それは、レベル3の方が具現化率が高い為で、それ故に、『本来の力に近い』レベル3は、よほど相性が悪くない限り、レベル1に負ける事は無い。

 オウキとキバは、同じ武霊使いから生じた武霊だ。

 人型と馬型の違いはあるが、同じ機能の武霊。

 相性の良い悪いは無いと言ってもいいはずなのに、拮抗している。

 つまり、夜衣斗が言っていた戦闘能力だけなら、オウキよりキバの方が圧倒的に上だと言う言葉は、真実だと言う事。

 そして、キバにはオウキにないサーバントのオーバードライブ化があり、こっちはオウキのオーバードライブを長く維持出来ない。

 圧倒的な不利。

 しかし、頂喜武蔵にもキバにはないものがある。

 もともと、オウキは『借りている武霊』。

 本来の頂喜武蔵の武霊・ガチャポンマンには『切り札』がある。

 それを使えば、この状況を覆せるが、

 (クソ!『あいつら』が死んじまわなければ使えたっていうのによぉ!!)

 そう心の中で絶叫しながら、頂喜武蔵はウィングブースターを上に噴出させ、一気に落下して鍔迫り合いから逃れる。

 同時に刀を収納し、両手に拳銃を取り出してレーザーモードで撃つ。

 黒い光線にキバが飲み込まれ、上にキバが吹き飛び、ある程度の高さまで吹き飛んだ所で黒い光線が唐突に消滅し、キバも消滅した。

 「死ねや黒樹夜衣斗!」

 キバが武霊有効範囲外に出て消滅した事を確認した頂喜武蔵は、続けざまに夜衣斗に向かって黒い光線を撃ち込んだ。

 黒い光線を撃ち込まれた夜衣斗は特に慌てる事もなく、キバを再具現化と共にシールドサーバントを光線の射線上に展開し、オーバードライブさせて防ぐ。

 その攻防により、頂喜武蔵と夜衣斗の互いの姿が見えなくなった瞬間、頂喜武蔵の前に大きな鏡が現れた。

 あまりの唐突ぶりに、反射的に攻撃しようとした頂喜武蔵の腕を、その鏡から飛び出した怪獣が抑え込む。

 その怪獣の出現に、頂喜武蔵は驚愕した。

 何故なら、つい先ほど消滅したはずの手下の武霊だったからだ。

 更に驚愕は続き、鏡から次々と現れる消滅したはずの手下の武霊達。

 「な!なんなんだこれは!?」

 そう声を思わず上げた時、武霊達が出終わった鏡に一人の少女が映った。

 自らを武霊チルドレンと名乗り、頂喜武蔵に忘却剤や武霊使い強化薬を提供した少女・呼衣。

 その少女が鏡に映り、こう言った。

 「貸してあげる。だから、もっと力を見せなさい」

 その瞬間、周りの武霊達が頂喜武蔵に吸い込まれ、鏡は消えた。

 後に残された頂喜武蔵は、シールドサーバントがオーバードライブにより消滅し、視界の晴れた夜衣斗に向け、邪悪な、楽しくて楽しくて仕方がないという笑みを向ける。

 「てめぇに見せてやるよ!俺の武霊の切り札を!」

 そう叫んだ頂喜武蔵はオウキを、一時的に『借りる事を止めた』。

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