第三章『奪われたオウキ』72
★夜衣斗★
オウキとキバの動力源であるライオンハートは、ガソリンエンジンと違って通常は音がしない。
だから、土砂降りの雨が降っている事も重なって、倒れている団長と東山刑事に拳を振り下ろそうとしている頂喜武蔵を強襲出来た。
そして、前進だけでなく後進も出来る様になってるから、空と前の攻撃を後ろに下がって避ける事も出来た。
………まあ、問題はこっからなんだろうが………
そう思っていると、オウキを身に纏った頂喜武蔵は刀をふらふら持ちながら笑った。
「てめぇ、状況分かってんのか?」
にまにまと笑う頂喜武蔵。
「今の俺はお前と違って意志力切れを起こす事はねぇ上に、レベル3だ。力も違う上に、まともにダメージを与える事も出来ねぇ。そうだろ?」
……確かにそうかもしれないが……
「ついでに言やぁ、あいつらもいる」
刀で周りを指す頂喜武蔵。
周りには崩れ続ける半透明で巨大な武霊達。
「見た感じ、そいつはオウキのサポートメカって所だろ?そんなんで勝てると、この状況を変えられると思ってんのか?え?とっとと町を出た方が、まだチャンスはあったかもしれないってぇのによ」
ちらりと俺は倒れている団長と東山刑事に視線を向けた。
頂喜武蔵を吹き飛ばすと同時に、シールドサーバントで二人を保護し、同時にヒーラーサーバントの治療を開始させているので………しばらくほっとても大丈夫だろう。
「無視すんじゃねぇ!」
……………俺はため息一つ吐き。
「………お前は勘違いしている」
「んだと!」
「………これは……キバは、オウキのサポートメカじゃない」
俺はそう言いながら、右手を上げる。
「………戦闘運搬特化型ロボット………戦闘能力だけなら、オウキより断然上なんだよ」
上げた手を振り下ろす。
それが合図になり、上空で待機していたステルスサーバント達が、CAサーバント達のステルスを解き、CAサーバント達が武霊達に突撃を開始する。
「………キバ。CAサーバントオーバードライブ」
俺の命令に、キバの角から一瞬黒い霧が生じ、消えた。
それと同時に、上空のCAサーバント達が黒い霧に包まれ、まがまがしい黒い装甲を纏い急加速。
そのまま武霊達に突撃し、武霊達の体内に侵入。
「………ブレイク」
通常のCAサーバントの爆発以上の黒い爆発を起こし、武霊達を内部から粉々にして吹き飛ばす。
全ての半透明で巨大な武霊達は、流石に全身を粉々にされると再生出来ないのか、残った大きな部位が次々と霧散するのを俺はスカウトサーバントから送られている映像で確認した。
「てめぇ………どう言う事だ!?オウキの説明書には、サーバントにオーバードライブが使えるなんて書いてなかったぞ!」
武霊達が全て消えたと言うのに、笑みを浮かべる頂喜武蔵。
………って言うか、説明書?………まあ、そう言う能力があるって事なんだろう。あのガチャポンには………。
「………言っただろ?キバは、戦闘運搬特化型だって………だから………終わりだ」
キバから飛び降り、それと同時にキバの具現化レベルをレベル1に戻して、バイクモードを解除。馬の姿に戻す。。
「っは!俺も言わなかったか?連中は、ついでってな!」
オウキ・キバ互いから大量のサーバントが飛び出し、互いの上空でにらみ合う形で停止。
俺も頂喜武蔵も地上でにらみ合い………それにしても……頂喜武蔵と対峙すれば、俺は自分がもう少しビビると思ってたんだがな………意外なほど怖くない………まあ、怒りが恐怖を上回っているんだろうが………。
そんな事を思いながら、俺は王継戦機の一シーンを心に描く。
「今こそ!」
大声で、そのシーンでオウキが仕えていた王が言ったセリフを叫んだ。
「今こそ!」
ほぼ同時に頂喜武蔵も同じ言葉を叫ぶ。
「「そのもう一つの名の意味を知らしめる時!!」」
俺と頂喜武蔵の言葉がハモリ、互いに不快に思ったのか、互いに眉を顰める。
「「ライオンハート機関フルドライブ!」」
その言葉と共に、キバ・オウキの装甲全体に黒い線が走る。
「「シールアーマー解放!」」
キバ・オウキの装甲が、黒い光線が走る場所から開き、そこから黒い光の霧の様な物が出てきて、一気にキバ・オウキを覆い隠す。
「キバは、機械の馬。キバは、騎士の馬」「オウキは、王の機械。オウキは、王の騎士」
キバ・オウキを包んだ黒い光の霧が、徐々に形を変え始める。
「そして、キバは、鬼の馬」「そして、オウキは、王の鬼」
黒い光の霧が完全に固着化し、キバ・オウキの姿を禍々しい姿に変える。
「「オーバードライブモード解禁!!」」