第三章『奪われたオウキ』69
★夜衣斗★
「よかった。無事そうね」
ミラーマンの武霊使いを受け止めたシールドサーバントをトンネル内に移動させた時、不意に背後から声を掛けられた。
あまりにも想像していなかった高木先生の声だったので、驚いて振り返ると高木先生がクスリと笑い、
「私がここにいる事がそんなに驚く事?」
「………予想は出来ませんでしたので、来るなら美羽さんか、飛矢折さんかな?っと」
「そうね。途中までは飛矢折さんと一緒だったわよ」
………やっぱり無茶をしてたか……武霊使いじゃないのに飛矢折さんも大概無茶をする……っと言うか、途中まで?
「コウリュウの叫び声が聞こえてから走り出したから、きっと赤井さんを助けに行ったと思うわ」
助けに行った?………!?
キバ!セレクト。スカウトサーバント十機。ヒーラーサーバント。PSサーバント二機。
俺の心の命令に、キバは命令通りサーバントを出し、スカウトサーバントを四方に散らせ、残り三機のサーバントを見付けた二人の下に直ぐに向かわせる事が出来る様に町の中央に飛ばした。
これで二人はなんとか………ってしまった!これじゃ町の外に出れないじゃないか………治療中のひよりさんも町の外に避難させられないし………………。
ちらっと、さゆりさんを見ると、さゆりさんはヒーラーサーバントの治療を受けているひよりさんを心配そうに見ていた。
俺はそのヒーラーサーバントに近付いて、治療状況を空間ディスプレイで表示させようとするが…………何度やっても文字化けを起こして、治療状況がさっぱり分からない。
………ここにも武霊の制約が掛るのか?………一体何なんだか………。
俺は思わずため息を吐いてしまい、それを聞いたさゆりさんは心配そうな目線を俺に向けてきたしまった。
「大丈夫です。少なくとも身体の損傷は全部治せますから」
「そうなの?………ありがとう夜衣斗君」
さゆりさんにお礼を言われ………俺は正直、困った。何故なら、ヒーラーサーバントの治療はあくまで身体の治療………遺伝子情報に基づいた治療なので、もし、忘却剤が脳の、シナプスを破壊する様な代物であった場合……ひよりさんの人格・記憶は………修復出来ない。
治療状況を確認出来ない今、とてつもなく歯痒かったが………今は、この場にいる三人の安全と、美羽さん、飛矢折さんの安全を………いや、それだけではダメだ。
視線を町の方に向ける。
起きた時から轟き聞こえている破壊音。
その音の正体・崩れた身体で暴れ回る巨大な武霊達に、コウリュウが何故か一体で立ち向かっていた。
自警団の武霊達の姿が依然としてない事に、俺は眉を顰めたが………今は深く考えている場合じゃない。
このまま放置すれば……………
俺は目を瞑り深いため息を吐いた。
「セレクト。PSサーバント」
PSサーバントを新たに出し、着る。
「行くの?」
何だか嬉しそうに高木先生が俺に問う。
何が嬉しいのか分からないが………
「………出来る事があるのに、しないのは嫌いですから………それに………」
ちらりとひよりさんに視線を向ける。
暗い炎が俺の中で再燃したのを感じた。
それを心の中に押し止めつつ、
「キバ!バイクモード!」