第三章『奪われたオウキ』65
★夜衣斗★
いつもの心の公園。
だが、公園には、サヤもショートヘアの女の子も居らず、さっきまで俺の腕を引っ張っていたロングヘアの女の子さえいなかった。
………声を出して呼ぶべきなんだろうか?
そんな事を考えた時、
「夜衣斗!」
美魅の声が後ろからし、振り返ると美魅人間形態にいきなり抱き付かれた。
抱き付かれた事に軽いパニックを起こす俺を無視して、
「よかっただわよ。このまま輪廻の輪か、黄泉の国へ行ってしまうかと思っただわよ」
輪廻の輪?黄泉の国?二種類あるのか?死後の世界って?
「川を渡ると輪廻の輪へ、川の源流にある穴に落ちると黄泉の国へに行ってしまうそうよ」
いつの間にかサヤが隣にいて、俺の疑問への説明をし始めた。
「川の向こう側が、人の集合無意識の世界。気脈とか言った方が分かりやすい?」
………なるほど、人の心は無意識かでは繋がっているって話は聞いた事があったが………死ぬとそっちに魂が吸収されてしまうわけか………
「そう。普通の人は大体川、人によっては見え方が違うけど、意識と無意識の境を渡って、魂が分解されて次に生まれる魂の一部になる。だから、輪廻の輪」
っで、分解がうまくいかなかった魂は転生者になるって事か?
「そう言う事。そして、穴の向こう側が」
世界樹の外側か?
「………その通りだけど………どこで知ったの?」
さっき、その穴、魔力孔だけ?の前で、多分、老人らしき人から。
「………そう……そっか、夜衣斗が死に掛けているから、記憶の封印が弱くなったのね」
記憶の封印!?なんだそりゃ!
「その内解けるから、気にしなくていいわよ」
気にするつうの!………まあ、でも、聞いても答えないんだよな?
「御名答♪」
……………まあ、いいや………っで、世界樹って何の事なんだ?
「この世界。夜衣斗が住んでいる世界の過去未来現在を含めた言葉よ」
過去未来現在…………つまり、パラレルワールドも含むって事か?
「そう言う事」
…………まあ、今は深く問う事は止めとこ……長い話になりそうだしな………そんな事より、いつまで抱き付いているんだ美魅?つうか、頬をすりすりして、喉をゴロゴロするな!
「これくらいいいじゃないだわよ。こっちは夜衣斗を探して駆け回っただわよ?」
「そうよ。このままあの子が夜衣斗を見付けなかったら、外の世界に魂が落ちて………蘇る事の出来ない死を迎えていたのよ」
…………まあ、それは感謝しているが…………っと言うか、あの子は一体何なんだ?あの子だけじゃない。ショートカットの女の子といい………サヤといい。
「それは………その内、思い出すわ」
………つまり、俺は知っているわけだ………いや、教えられているわけだ…………まあ、いい。思い出せないなら、思い出すまで、この話題は放置しよう。今はそんな事より………っで?こっからどうするんだ?結局は、俺はまだ死に掛けているんだろ?
その俺の言葉に、美魅も抱き付きながら疑問の視線をサヤに向ける………つうか、いい加減に離れろよ………
「夜衣斗。私はあなたに言ったよね?後は夜衣斗次第だからねって」