第三章『奪われたオウキ』64
★???★
見えない障壁を張っているシールドサーバントを足場に、空中を掛け上がるコロ丸を身に纏った美春。
その美春に攻撃を仕掛けてくる他サーバント達は、背に乗っている賢治とコロ丸の体毛の刃により次々と破壊。
瞬く間にサーバントの群れの中にいるオウキを身に纏った頂喜武蔵に接近。
二人が本気の攻撃を仕掛けてこないと分かっている頂喜武蔵は、悠然と構えていたが、賢治が十字銃を巨大な光剣に変えた事を見て、慌てて上昇。
その直前まで頂喜武蔵が居た場所に光の刃が走る。
「てめぇ!刑事のくせして殺す気か!」
「っは!くそガキ!てめぇが全力で避けりゃいいだけの話だろうが!」
一瞬の邂逅で、激しく火花を散らす頂喜武蔵と賢治。
コロ丸が落下を始めると同時に、賢治は十字銃を光線銃に戻し、連射。
その全てが頂喜武蔵が避けなければ当たっていた。
避けられる事を前提にした全力攻撃。
それが賢治と美春が出した『時間稼ぎの選択』。
無論、下手をすれば頂喜武蔵に攻撃が通り、殺してしまう可能性もあるが、その覚悟は決めている。
後は、夜衣斗が無事に町の外に出て、頂喜武蔵がオウキを使えなくなれば、捕まえる勝算はあるが………二人は知らない。夜衣斗が死の一歩手前まで来ている事を。
★夜衣斗★
運命を変える選択!?
って事は、こいつが俺に何かを与えたって奴か!?
そう思うと同時に、俺は条件反射的にその顔を確認しようと近付いた。
その瞬間。
俺の足が空を切った。
驚き、反射的に下を見ると、そこには何もない。
大穴……魔力孔から発せられる水……魔力の霧により気付けなかったらしく、それは魔力孔から延びる亀裂だった。
その亀裂は大きく、また地面があるものだと思って踏み入れた勢いにより、俺は亀裂の先・何も見えない闇の中に落ち……るっと思ったが、誰かに腕を掴まれたので、落ちる事はなかった。
誰が掴んだか確認すると………心の中の公園で見たロングヘアの女の子だった。
その女の子は必死な表情で俺を、子供とは思えない力で引き上げてくれた。
「………えっと、ありがとう」
お礼を言うと、女の子はにっこりとほほ笑んでくれたが………何者なんだろう?喋らないって事は………武霊か?
「ここは危険です」
喋った!?って事は武霊じゃないのか?本当に何なんだ?
「こちらへ」
そう言って、女の子は俺の腕をやや強引に引っ張り、どこかへ導こうとする。
あまりの力の強さに、元々抵抗する気がなかったのも加え、どんどん引っ張られる。
訳が分からないが、少なくとも、この子に悪意は無さそうだし………
そう逡巡していると、後ろから、
「願わくば、君に与えた運命を変える選択が、あらゆる宿命の悪意に打ち勝つ事を」
っと言う老人らしき人の声が聞こえた。
振り返ると、魔力の水霧が濃くなっていて、もう人影すら見えず、魔力孔も見えなかった。
そして、気が付くと………いつもの公園に俺はいた。