第三章『奪われたオウキ』62
★???★
崩れ、暴れるレベル4の武霊達の間を、コロ丸を身に纏った美春が駆け抜ける。
その背に身体に伸びた体毛が巻き付き固定されている賢治が乗っており、賢治は十字銃の刃を最大限にし、通り抜けざまにレベル4を切り裂くが、身体が崩れ続けていると言うのに、切り裂かれた場所が瞬時に再生された。
驚異的な再生力を見た賢治はレベル4を攻撃する事を早々に止める。
暴れるレベル4は町に被害を出してはいるが、その範囲はまだ住民の避難が完了している廃工場近隣のみで、数日経てば源さんにより修復される。それならギリギリまで放置して、崩壊が更に進んだ状態で攻撃した方いい。
そう賢治は判断した。
もっとも、今のレベル4達が、ただ暴れるだけではなく、その能力・機能を使っていたなら状況は違ってくる。
今の所、その兆候はないが、もし使われたなら………。
最悪な状況を想像し、冷や汗が流れる。
だが、今はレベル4達ばかりをかまってられる状況でもなかった。
賢治が後ろを見ると、無数の様々なサーバント達が迫っている。
追ってきているサーバント達に向かってレーザーモードの十字銃を連射。
放たれたレーザーはサーバントを次々と霧散させるが、消えた数だけ直ぐに現れる為、焼け石に水状態だった。
「さて、どうする美春?」
そう賢治が美春に問い掛けた時、上空で閃光が走る。
反射的に見上げると、レベル2のコウリュウがレベル4達に向かってレーザーブレスを吐いていた。
「あの子は………まったく、仕方のない」
賢治は思わず安堵の混じった苦笑を浮かべた。
「子供達が無理をしているのに、大人が無理をしないのはおかしいよな美春?」
「そうね」
賢治の問い掛けに、賢治からは見えないが美春は笑みを浮かべた。
★夜衣斗★
行けども行けども同じような風景が続く。
俺が今いる川は、一般的な三途の川とは違い、どこぞで見かけた様な川だった。
土やコンクリートで作られた土手に、所々にある木々。
岩や石に、緩やかな流れの川。
これに橋などが架かっていたら、普通の光景に思えただろうが……いや、無理か。
視線を外に向ける。
川の外側には何故か様々な花が咲き乱れる花畑になっていた。
………何というか………節操がない死後の世界のイメージと言うか………。
思わず苦笑し、視線を正面に戻した時、
不意にそれは現れた。
な!なんじゃこりゃ!?
っと思わず声を出さずに絶叫。
目の前に現れたのは………空に浮かぶ巨大な穴と、それを塞ぐ巨大な………手?
…………………わけわかんねぇ…………何なんだこの穴は…………。
手によって塞がれている巨大な穴から……手で塞いでるせいか指と指の隙間から水……そもそも水なのか疑問だが……が出ていて、川になっていた。
ここが源流なのは間違いない様だが………あまりにも巨大なせいで、上の方から出る水は霧になってて、周囲の光景が見えなくなっている。
だからか、気付くのに遅れた。
いつの間にか、隣に誰かが居り……霧のせいでその姿は確認出来ないが、巨大な穴を見上げているのは分かる。
一瞬、サヤかとも思ったが、体型の輪郭からして、男だった。
………男も俺の心の中に住んでるって事なんだろうか?
そんな事を思っていると、その男が、
「これが何の穴か、君は分かるかい?」
っと言った。
その声は、明らかな老人の声で………聞いた事がないのに、聞いた事がある様な声だった。