第三章『奪われたオウキ』61
★美羽★
目を覚ますと、私は誰かに背負われていた。
「つぅ!」
頭に強い痛みを感じて反射的に手を当ててしまい、より強い痛みを感じてしまう。
「起きたの赤井さん!?よかった。頭へのダメージは見た目ほどじゃなかったみたいね」
頭へのダメージ?
触った時の痛みから引いた手を見ると、雨水に赤いものが混じっていた。
…………そっか、着地に失敗したんだ………。
茫然と未だに振ってる雨に流れる血を見つつ、はっと気付いた。
「なんでここに巴先輩がいるの!?」
思わずそう声に出した時、人の様な、獣の様な咆哮が聞こえ、反射的にその聞こえた方向を見た。
そこにはグズグズに崩れた巨大で半透明な武霊達がいて、まるで崩れる痛みに苦しんでいるかのように暴れまわっている。
「何が起こっているの………そうだ!美春さんと東山さんは!?」
私の問いに巴先輩は少し躊躇って、
「今、あたし達を逃がす為に戦ってるわ」
私達を?
視線を再び暴れる武霊達の方向に向けると………確かにその合間合間に閃光やサーバントが見え隠れしている。
……手伝いに行かないと……
「巴先輩、降ろ」
して。っと言おうとして、くらっときた。
「無理をしないで」
無理をしないでって言われても………そう言えば……他のみんなは?
空を見回すけど、自警団の人達の武霊はどこにもいない。
……こんな状況で自警団の人達が武霊を出さないなんて事は………あるわけない。
つまり、何らかのトラブルが……状況から考えて、星波学園……琴野と連絡が付かない事と同じ事が起きてるんじゃ………何であれ。自警団の人達の戦力が当てにならないなら、私一人で何とかするしかない!
「巴先輩。このまま私の足をお願いします!」
「ちょ!ちょっと、何を」
私は止めようとする巴先輩の言葉を最後まで聞かずに、
「コウリュウ!」
を具現化させた。
★夜衣斗★
気が付くと………ってか、またこのパターンか………まあ、気が付くと、見知らぬ川の前に立っていた。
………川!?川って……………えっと………確か、ミラーマンの武霊使いにぼこぼこにされて………気が付いたら……ここにいた。って事は……………死んだ?俺。死んだ?……………三途の川って本当にあるんだな………いや、死後の世界っと言うのは、個々人で違うみたいだから、結局はこれが死の世界だって俺がイメージしてるって事なんだよな………まあ、花畑って、柄じゃないからいいが…………………ん?って事は、まだ死んでないのか?様は死ぬ間際の脳みそが見せている幻覚って事なんじゃ………まあ、結局死ぬって事か………
思わず深いため息を吐く俺。
そして、ふっと気になっていた事を思い出した。
………三途の川の源流ってどうなってるんだろう?
昔、三途の川の話を知った時、そんな事を思った。
どうでもいい、多分、答えのない疑問なんだろうが…………まあ、このまま死ぬのなら、そんな疑問の答えぐらい知ろうとしてもいいだろう。
そう思った俺は、川が流れてくる方向・上流へと向かって歩き出した。