第三章『奪われたオウキ』58
★???★
唐突に消えた防御鱗に代わり、再具現化させたコロ丸に乗り美羽が落ちた場所に急ぐ美春と賢治。
「美羽ちゃん………」
ぎゅっとコロ丸の毛を握る美春。
「大丈夫だってぇ〜、あの美羽ちゃんだよぉ?」
極力いつも通りの口調と雰囲気を出そうとする賢治だが、動揺しているのか、微妙にいつもと違かった。
それに美春は少し苦笑して、動かないレベル4の群れを見る。
体内の武霊使いは、そのほとんどが既に頭部までしかなく、どう見ても手遅れの様に見えた。
「助けられるなら」
ぼそっと美春はそう口にしたが、途中で言葉を区切った。
言っても仕方がない事だからだが、心は止められない。
「急ごう美春。きっと武霊使いが全て喰われれば………あれは動き出す」
賢治のその言葉は、美春も予想していた事だった。
だが、美春にはどうする事も出来ない。
何故なら、
背後を振り返る美春。
その空には誰の武霊もいない。
さっきまで自警団の武霊が何体も飛んでいた。
それが気が付いたら居なくなっており、連絡すら取れなくなっていた。
武装風紀に続き自警団にも、これは明らかに星波町で『鬼走人骸以外の何かが起きている』。
しかし、鬼走人骸を放って置けない以上、それを確認する術がない。
それを歯がゆく思いながら、美羽との合流を急ぐ二人だった。
★夜衣斗★
四体以上のミラーマンに四肢を無理矢理地面に押さえ付けられ、いよいよ身動きの取れなくなった。
手鏡から足を引っ込め、悠然と近付いてきたミラーマンの武霊使いは特に何も言わず、ひよりさんを俺の上から起き上がらせ、乱暴に地面に倒す。
そんな事をされてもひよりさんは何も言わず、倒れたままピクリとも動かない。
心配になる光景だが、
「他人を気にしている場合か?」
いきなり腹部を踏み付けられた。
胃液が逆流し、咳き込み、口の中が酸っぱくなる。
「無様だよな!」
今度はわき腹を蹴られ、嫌な音と共にとてつもない激痛に襲われ、意識が遠のきかけるが………息を吸った時の訪れた激痛、咳き込んだ時に口から吹き出した血で肋骨が折れ、片肺に骨が刺さったと思った。
実際の所は分からないが、絶え間なく続く強弱のある激痛に、意識が遠のく事すら許されず、更に続く容赦ない蹴りや踏み付けに