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第三章『奪われたオウキ』57

  ★夜衣斗★

 「夜衣斗君」

 西島さんが困惑した様な、怯えた様な声で俺を呼んだ。

 ミラーマンの武霊使いが、雰囲気から味方でない事を察したみたいだが………呼ばれてもこっちもどうすればいいか………いや、どうする?考えろ。考えろ俺………今の俺にはオウキは使えない。人化した美魅がいるが………果たして武霊に勝てるだろうか?

 そう思った瞬間、ミラーマンの身体が分裂し始めた。

 まずい!確かミラーマンの能力は、偽者を作り出す事。

 「美魅!」

 契約により魂が繋がっているせいか、名前を呼んだだけで美魅は俺の意図に気付き、ドアの傘から手を放し、一気にミラーマンに接近、剣の爪を一閃した。

 だが、その一閃は美魅の姿になったミラーマンの剣の爪に防がれてしまう。

 間に合わなかった。

 心の中で舌打ちをしつつ、前にいる西島さんに聞こえるギリギリの音量で、

 「トンネルまで走ります」

 「え!?」

 突然の俺の提案に驚いて後ろを振り向く西島さんだが、活路はそれしかない。

 ってか、俺の身体能力で………出来るか?……だが、やるしか!

 何とか一人で支えていたドアの傘を投げ捨て、ぼうっとしているひよりさんをお姫様抱っこし、走り出す。

 それに慌てて並走する西島さんを確認しつつ………やばい。物凄く重い………などと女性に対して失礼な事を思ったが、今はそれを気にしている余裕はない。

 頼む美魅!少しの間だけそいつらを抑えておいてくれ!

 そう心の中で思うと、伝わったのか、俺達に襲い掛ろうとしたミラーマンから分裂したもう一体のミラー美魅を邪魔してくれた。

 ミラーマンの武霊使いは、横を通り過ぎる俺達に視線を向けるだけで、何もしようとしない。

 それを不審に思った時、俺の身体がトンネルに差し掛かかり、瞬間、足に何かが引っ掛かり、前のめりに倒れそうになり、とっさにひよりさんを守る様に回転して、背中から地面に倒れる。

 あまりの衝撃と激痛に一瞬息が出来なくなり、咳き込む俺の顔に、再び衝撃と激痛。

 続く強烈な圧迫感。

 何とか開く片目で確認すると、それは誰かの足だった。

 トンネルの中には誰もいなかったはず………これはどういう事だ?

 訳が分からず、視線を踏み付けられている足の上に向けると、そこには………何もなかった。

 代わりにあるのは、ももの太さより大きな手鏡。

 そこから足は生えていた。

 引っ掛けられたのは、この足なのは分かったが………つまり、これが俺をさらった武霊能力か?ミラーマンにそんな能力は無かったはずだが………ってか、なんで手鏡は浮いてるんだ?

 その疑問は直ぐに分かった。

 浮いている手鏡には、丁度手の形で消えている部分があり………多分、ミラーマンが周囲の風景に化けているんだろう。

 ………何にせよ。ミラーマンの武霊使いが仕掛けた罠にまんまと引っかかってしまったわけだ。

 ぼーっとしているひよりさんは俺の上から全く動かない。

 顔にはミラーマンの武霊使いの足。

 この二つで身動きが全く取れない。

 視線を巡らすと、西島さんは見えない何か、ミラーマンに羽交い絞めされている。

 美魅は二体の偽者に苦戦しているはず。

 ………絶体絶命な状況に、俺はどうする事も出来なかった。

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