第三章『奪われたオウキ』55
★美羽★
「コウリュウ!防御鱗十一枚!」
防御鱗十枚を上空の頂喜武蔵に牽制の為に飛ばし、残り一枚の防御鱗に飛び移って(落っこち移って?)コウリュウを再具現化させようとした時、その防御鱗が霧散してしまう。
霧散した防御鱗の向こうから、見えない刃を展開したソードサーバントが現れた。
落下中のコウリュウの上ではまともな身動きが取れない私に向かってくるソードサーバント。
瞬間的に高まった恐怖に、コウリュウが反応して残った翼で無理矢理落ちる方向を変えた。
それでもソードサーバントの追跡は振り切れなくて、私には当たらなかったけど、コウリュウの背中に直撃してしまう。
片翼を切られた時以上の咆哮を上げるコウリュウ。
普通ならこれだけのダメージを与えられたら霧散してしまうはずなんだけど、コウリュウは無理をして具現化を維持している。
私には確認出来る余裕はないけど、きっともう再具現化するほど余裕がないんだと思う。
その証拠に、私の周りの保護力場が強くなった。
瞬間、凄い衝撃に襲われ、少し遅れてコウリュウが霧散。
下にコウリュウによって潰された建物の残骸が見える。
コウリュウが消えているから保護力場はもうない。
再具現化をしている暇もない。
どうする事も出来ないまま潰れた建物の上に私は落ちた。
なんとか受け身らしい受け身を取れて、転がって衝撃をぶ
★飛矢折★
コウリュウが落ちた場所に急いで向かうと、潰れた建物の上で、赤井さんが倒れていた。
一気に血の気が引く。
大慌てで近付いて、まずは触らずに赤井さんの様子を確認する。
身体の方は何ともないようだったけど、気絶している。
しかも、頭のどこかを切っているみたいで、雨水と一緒に赤い血が地面に流れていた。
雨水を差し引いて、出血量は大した事がないから傷は浅いみたいだけど………頭部のダメージは見た目だけじゃ判断は出来ない。
だからと言って、このままここに置いて置くわけにはいかなかった。
上空に視線を向けると、無数のサーバントが集まり出している。
赤井さんの頭部のダメージが深刻でない事を祈りつつ、素早く、慎重に赤井さんの身体を動かし、背負う。
持てる技術を全て使って、赤井さんの頭がなるべく動かない様にしながら、あたしは走り出す。
それと同時に、サーバントの何機かがあたし達に向かって突撃してくる気配を感じ、何とか避けるけど、まるでいたぶる様に……いえ、完全にあたし達をいたぶって……
抑え様のない本能的な恐怖があたしの中から湧き出してくる。
きっと後少し、後少しすれば、黒樹君が町を出て、オウキが使えなくなるはず。
そうあたしは自分に言い聞かせて、湧き上がる恐怖を抑え込んで走り続けた。