第三章『奪われたオウキ』52
★美羽★
追ってくるサーバントに防御鱗を飛ばしてかく乱。
大量のサーバントには僅かな間しかかく乱できないけど、それでも少しの間だけ攻撃のチャンスが出来る。
「コウリュウ!拡散レーザーブレス!」
私の命令にコウリュウは牙を閉じたままレーザーブレスを放つ。
拡散したレーザーブレスが、シールドを展開したシールドサーバントごと貫き、その後ろのサーバントも貫通。
コウリュウはそのままレーザーブレスを放ちながら、首を動かし、斬る様にサーバントの群れのほとんどを霧散させた。
サーバント達が空中の私達を追ってきたから出来た事とは言え、何だか拍子抜けするほど簡単に倒せた様な………。
そんな事を思いながら下を確認すると、美春さんを東山さんがうまく助ける事が出来たみたいで、頂喜武蔵とオウキしかいない。
その一人と一体は、サーバントをほとんど私達に倒されたと言うのに、廃工場のレベル4達を見ていた。
………何だろう?……なんでさっきから『動かない』んだろう?
さっきから……ずっと見てたわけじゃないけど……現れた所から一切動いていない様に見える。
頂喜武蔵もそれを気にしている様だけど………不気味だった。
とりあえず頂喜武蔵を警戒しながら、ポケットからいつも持っている折り畳み式オペラグラスを取り出して、レベル4の武霊を見てみた。
レベル4の身体は、半透明だから、中の武霊使いが見えて、何が起こっているか分かるかもって思ったんだけど………見ない方が良かった。
だって………レベル4の武霊の中心にいる武霊使いの………手足が『消えていた』から。
しかも、その消える部分は私が見ている前でどんどん拡大していて………その隣の、その隣の武霊使いも同様で………それはさながら、武霊に『喰われている』様に見えた。
★???★
「……薬の効果に耐え切れなかったみたいね」
メガネに、三つ編み、そして、必要な場所以外無い簡素なゴスロリ服を着た小学生ぐらいの女の子・呼衣は、廃工場の建物の一室で、冷静に外の状況を見ていた。
「やはり薬の耐性には個人差があるのね」
そう言いながら、呼衣は部屋に置いてあるアタッシュケースを手に取った。
そして、もう一度外の様子を見る。
すると、武霊に意志力だけでなく、存在自体まで喰らわれ始めていた鬼走人骸の武霊使いの一人が、こちらを見ている事に気付く。
憎悪と恐怖が入り混じった視線。
その視線に、呼衣は冷笑を浮かべ、その部屋を後にした。