第三章『奪われたオウキ』49
★飛矢折★
「じゃあ、行きましょうか?」
そう言って高木先生は、持っていた傘をあたしに渡してくれたけど………
躊躇っているあたしに高木先生は少し笑って、
「黒樹君は考える子よ。考え過ぎるぐらいにね。そんな子が地理を分からないぐらいで目的を遂げないと思う?」
…………それは、
「思いません」
「じゃあ、少なくとも、ここからこっちも町の外へ向かえば必ず追い付けるはずよ」
高木先生はそう言って、あたしに折り畳まれた紙を渡した。
疑問に思ってそれを広げると、廃工場一帯の地図のコピーだった。
しかも、今いる建物には赤丸がしてある。
「東山君から借りたのよ」
「そうですか……それでその刑事さん達は?」
そんなに広い建物じゃないから、手分けをすれば直ぐに探し終わると思ってたけど、今の所、こっちに来る人の気配はない。その事を疑問に思っていると、高木先生は困った顔をして、
「自警団が不利な状況に追い込まれたみたい」
「不利な状況?」
「ええ、私は外の様子を見れないから詳しくは分からなかったけど………どうも武装風紀の子達がいつまで経っても参戦しないみたい」
あたしが調べていた場所は戦いの様子が死角になる所だったから様子はうかがえなかったけど、そんな事になっていたなんて………でも、どうして?
「そんな状況だから、自力で脱出している黒樹君の救援より、自警団の応援に行った方が良いって判断したみたいね。少なくとも、私達が黒樹君の所に合流すれば、多少の武霊使いが追っていても何とかなるでしょうし」
多少のって………過大評価なんじゃ………。
武霊使いが誰も残らなかった事に不満と不安を感じるあたしだけど…………それだけ窮地に陥っているって事なのかな?
「どうしてあの子達が参戦しないのか、私の方からも連絡を入れてみたんだけど………出なかったわ」
「出ないって………学園の方はどうですか?あそこにはまだ武霊使いが」
「学園の方もダメだったわ」
そんな………一体何が起こっていると言うの?
「何が起こっているか、今の私達には知り様ないわ。だから、今は黒樹君に追い付く事に集中しましょ?」
高木先生はそう言いながら、外に出て傘を差した。
「……そう……ですね」
あたしは頷いて外に出て傘を差す。
その時、空か物凄く大きな咆哮が起きた。
あたしは思わず駆け出す。
空にはコウリュウが……赤井さんが飛んでいた。
嫌な予感がする。
咆哮の聞こえた方向を見ると、そこには………