第三章『奪われたオウキ』46
★飛矢折★
裏口らしき場所を見付け、そこの扉を使えなくしていたであろう鎖やら棚やらが扉の周りに散らかっていのを確認して、あたしは少しほっとした。
この様子からすると無事に逃げてくれているのは間違いない………でも………。
散らかっている鎖や棚をよく見ると、とても人の業とは思えない鋭い切り口………黒樹君が閉じ込められていたと言う部屋の前に在った鎖とかと同じ切り口がある。
………高木先生は、さらわれたもう一人の女性が武霊使いに目覚めたんじゃないかって言うけど………そんな事が、続けて起こるものなのかな?………仮に起こったとして、それは星波町の武霊の仕組みに、何か大きな変化が起こってるってことなんじゃ…………考えても仕方ないか、大人が考えても分からない、それも武霊使いでもないあたしが考えても、到底正解が分かるとは思えない。
そんな事を考えつつ、あたしは扉から濡れない程度に顔を出し、周りを確認する。
外は大雨になっていて、非常に視界が悪くなっているけど、隣の建物の様子が分からないほどじゃない。
………今いる建物は廃工場地帯の大体真ん中ぐらいにある。そんな場所を黒樹君が認識している可能性は低い。だからと言って、あの黒樹君が闇雲に逃げると思えない。じゃあ、黒樹君は何を指針にして………
爆発音や閃光・振動が立て続けに起こってて、今も戦いは続いているのは見えなくても分かる。
どっちが優位になってるかは………あまり考えたくはないけど、オウキを奪っている鬼走人骸側に分がある。これは、オウキの武霊使いである黒樹君が承知していないなんて事は、まずないと思う。だとすると、黒樹君はその状況を何とかしようと動くはず。
団長さんの話によると、頂喜武蔵の武霊の能力は、なんであれ貸している対象が星波町の外に出てしまえば、無効化する……町の外には武霊の力が及ばないって事なのかな?………まあ、そうらしいから、武霊使いであるあの黒樹君が、その事に気付かないなんて事はないと思う。
………つまり、黒樹君は、戦闘に巻き込まれない、そして、鬼走人骸達に見付からないルートで町の外に向かっているはず。
そこまで考えて、その考えに重大な欠点がある事に気付いた。
って、あたしも、何より黒樹君はこの辺りの地理に詳しくないじゃない。これじゃ黒樹君がどっちに向かったなんて、分かり様が………
手詰まりな状況に少し硬直していると、別の場所を探していた高木先生が現れ、その手には何処からか傘を二つ持ってきていた。