第三章『奪われたオウキ』44
★夜衣斗★
その部屋には、よく嗅ぐ事がある匂いが充満していて………吐き気と共に、抑えきれないほどの怒りが湧きだし、身体が震えた。
西島さんは、部屋のベットに腰かけ、茫然としているひよりさんに声を掛けているが、ひよりさんの反応はない。
………忘却剤でもかがされているのかもしれない。
閉じ込められていた部屋から脱出した後、美魅の導きでひよりさんのいる部屋を突き止めた。
その部屋は、建物の一番奥にあったから、頂喜武蔵の部屋である事は間違いなく…………そこに置かれていた描写したくない様々な道具が、ここでひよりさんに何をしていたか………容易に想像出来るもので、怒りにより拍車を掛ける。
………今、オウキが俺のコントロール下になくてよかった…………もし、あったのなら、俺はこの怒りに身を任せ………頂喜武蔵を間違いなく……………殺していた。考えられる限り残忍な方法で…………。
西島さんに頼まれて、美魅はひよりさんをベットの柵に繋いでいる鎖を切り、自由になったひよりさんを西島さんと一緒に立ち上がらせた。
俺は暴れる感情を落ち着かせる為に先に部屋の外に出て、口に手を当てて吐き気を抑える。
通路の窓を開けて深呼吸。
……………多少は落ち着いたかな…………。
そう思った時、連続した振動を感じた。
………まるで複数の巨大な何かが闊歩しているかのような………ってレベル2しかないよな………複数のレベル2って事は、五月雨都雅が使ったあの薬品も連中に渡ってるってことなんだろうか?………ん?あれってレベルを二段階上げるものじゃなかったけ?………今回のは劣化版?…………いや、個人差があるのか?
そんな事を考えながら、部屋から出てきた二人と一匹?の前に移動して、近くにあった鉄パイプを持った。
………まあ、無手をよりはましだろう…………。
「………じゃあ、さっき見付けた裏口から脱出しましょうか?」