第三章『奪われたオウキ』43
★飛矢折★
「………君は何をしてるのかなぁ?」
黒樹君を探して建物の中をうろうろしていると、ばったりと刑事さん達に会った。
………正確には事前に高木先生が気付いて、気配で誰かまでわかったから、こっちから近付いたんだけど……向こうはそこまで気配に鋭くないから、ばったりって感じだった。
「先生も、なんでここにいるんですかぁ?先生でしょ?」
刑事さんのやや呆れた感じの避難に、高木先生はにっこり笑って、
「引率です」
「何のですか………」
流石の刑事さんも呆れた顔になってた。
「外の連中は先生達がやったのは分かったが………肝心の黒樹君は見付からなかった様だな」
?……何故か刑事さんは高木先生から視線を外し、あたしに顔を向けた。
「はい。黒樹君が閉じ込められていたと言う部屋に行ったんですが……誰もいませんでした」
あたしの報告に、刑事さんは眉をひそめる。
「いなかった?……そこに黒樹君がいたと言うのは確かな情報?」
「少なくとも、嘘は言ってなかったわね」
っと高木先生。
高木先生の話によると、心音とかで人の言葉の真偽が分かる……らしい。
………あたしのクラスの担任だけど、こんなにすごい人だとは思わなかった。
「鬼走人骸の誰かに聞いたわけですか………まあ、先生がそう言うなら、その情報は間違いないでしょうが……それで、場所を聞いた奴はどこにいるんだ?」
また、あたしの方に顔を向ける………どうやら高木先生が苦手みたい………そう言えば、さっきから口調が普通だ………。
「気絶させて、黒樹君がいた部屋の隣に閉じ込めてあります」
「隣に?」
「黒樹君がいた部屋の鍵は壊されていましたから」
「っと言う事は、黒樹君が自ら脱出した可能性が高いわけか………だが、どうやって?さっきここに来る途中に目撃したんだが、オウキは奪われていたんだが………」
刑事さんさんの疑問に、あたしは首を横に振った。
「わかりません……ただ、鍵の部分やドアの部分に掛けられていたと思われる鎖が、とてつもなく鋭い何かで切断されていましたから………」
「もう一人のさらわれた人が武霊使いになったんじゃないかしら?」
高木先生の口にした可能性に、刑事さんはやや躊躇ってから、首を横に振った。
「西島さゆりさんは、この町に来てからまだ一日とちょっとしかいません。それは」
「ありえるでしょ?前例があるんだし」
前例………黒樹君の事だろうけど………。
刑事さんが高木先生の指摘に言葉を詰まった時、地響きが起きた。
それも、連続して………まるで巨大な何かが集団で歩いているかの様な………!?
条件反射的に振動のする方向、雨の降っている窓の外を見ると、そこにはレベル2の武霊が無数にいて、町の方へと歩いていた。
その先頭には、ウィングブースターを広げて空を飛ぶ半透明のオウキがいて、その中には大男が……状況から考えて、頂喜武蔵が入ってる。
あんな数のレベル2とレベル3のオウキを自警団と武装風紀だけで防げるの?
急がないと………せめて、オウキだけでも何とかしないと……………黒樹君。あなた今、どこにいるの?