第三章『奪われたオウキ』41
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鬱陶しい雨をシールドサーバントで防ぎながら、頂喜武蔵は小瓶から錠剤を流し込み、噛み砕いていた。
その錠剤は、忘却剤や強制武霊覚醒剤などと一緒に提供されたもので、服用すれば意志力が回復すると言う代物だった。
確かに頂喜武蔵は錠剤を飲み込む度に意志力の回復を実感していた。
だが、その回復すらオウキの具現化維持の意志力消費に追い付いていない。
頂喜武蔵は、夜衣斗が出したというサーバントの数以上に出していないと言うのにだ。
この薬剤を提供した少女の話によると、一錠で通常の武霊一体を具現化するぐらいの意志力が回復する。そう言う話だった。
そこから考えると、既に『二瓶空にしている』事も踏まえて、夜衣斗は、
「化け物か」
っと言う事なる。
頂喜武蔵は、夜衣斗をさほど重視していなかった。
ただ他の武霊使いから群を抜いて強力な武霊を所持しているだけの、カモ。
その程度の認識だった。
だが、こうなると、夜衣斗にも得体の知れなさと共に、興味が湧いてくる。が、その興味が夜衣斗自身に向けれる事はない事を知っていた。
何故なら、夜衣斗は後少しで、『殺される事を知っている』からだ。
だから、その少しの間、頂喜武蔵はオウキを楽しみ尽くそうと考え、ズボンのポケットからある物を取り出した。
それは、五月雨都雅が使用した注射器と同じ物だった。
そして、頂喜武蔵の携帯が鳴り、頂喜武蔵は笑みを浮かべる。
手下達が武霊使い強化薬を打ち終わった。
携帯の着信はそれを知らせるものだったからだ。
頂喜武蔵は自分の首筋に注射器を打ち込み、空になった容器を投げ捨て、携帯を操作した。
一斉攻撃の合図を送る為に。