第三章『奪われたオウキ』38
★夜衣斗★
え!?え?………え!?
あまりの事に大混乱。
状況から考えて、目の前にいるのが美魅。
っで、美魅にファーストキスを………奪われた。
あまりの突発的な事に、かなりの衝撃を受けて固まる俺。
茫然としている俺を尻目に、美魅は唇を放し、自分の手を見て、近くに落ちていた鏡の破片で顔を確認する。
「おお!?何これ?凄いだわよ」
っと美魅。
顔は全体的に猫っぽいが………美人で………何故かメイド服ぽい格好で、頭部に猫耳・お尻に尻尾がある。
………いやいや、漫画過ぎるでしょ………これは…………。
「夜衣斗君」
困惑した様子の西島さんが近付いてきた。
「………まあ、この町は色々と非常識ですから………」
いまだに混乱している頭では、それぐらいしか言えなかった。
…………なるべく別の事を考える事にしよう……うん。そうしよう。………っで、とりあえず、
「………っで?どうなんだ?」
俺の問いに、美魅は身体の調子を確かめる様に手を振ったり、ジャンプしたりした。
そして、右掌を上に向け……いきなり爪が伸びる。
人間の爪がではなく、人間の身体の爪の上に別の、剣の様な爪が現れている。
それを出しては、引っ込めを数度繰り返し、ポンっと音を立てて元の猫の姿に戻っては、ポンっと人間形態になった。
「いけそうだわよ」
そう言って美魅は………どっきとする笑みを浮かべた。
………まあ、あれのせいなんだろうが………。
俺は堪らず、ふいっと視線を外してしまい………その為、西島さんには微笑まれ、美魅に不思議な顔をされてしまった………はぁ………。