第三章『奪われたオウキ』37
★夜衣斗★
「これは人の魂と、あたいの様な存在の魂を繋げ、互いの力を貸し合わせる道具だわよ」
そう言って美魅は俺の中から一枚の洋紙を取り出してきた。
………いつの間にそんなのを俺の中に入れていたんだが………
「そうする事で、あたいは夜衣斗から意志力を貰え、普段のあたい以上の力を出す事が出きる………らしいだわよ」
「………らしいだわよって………」
「しょうがないだわよ。これを貰ってから、一度も試した事がないんだわから………」
困った感じの美魅に俺はため息を吐き、目の前に置かれた洋紙を見た。
何語で書かれているかさっぱり分からないが…………普通の紙に見た目上は見える。
だが、よく見ると妙な違和感を覚える。
重くないのに重いと言うか………まるで、この一枚に書かれている以上の膨大な情報が込められている………そんな感じがした。
………っと言うか、
「………誰から貰ったんだ?」
「………サヤからだわよ」
サヤから…………あの女………これも運命を変えられる選択って事か?
「………美魅はそれでいいのか?」
「まあ、夜衣斗には迷惑をかけただわし、これからも厄介になるんだわから……家賃代わりに、契約してもいいだわよ」
家賃代わりって………。
「どうするだわよ?夜衣斗」
ちらっと部屋の中をうろうろ調べている西島さんを見る。
なんとか脱出出来ないか調べているのだが………やっぱり無理っぽかった。
俺はため息一つ吐き、
「………得体が知れないが………方法はそれしかないか…………頼む美魅」
「わかっただわよ、夜衣斗」
頷いた美魅は、地面に置かれた洋紙に何事かをつぶやいた。
すると、洋紙は勝手に浮かび上がり、俺の顔の前、微妙に中心が下の方にずれて止まる。
………これってもしかして………
洋紙に描かれている文字が輝き始め、縦書きの文字が移動し、洋紙の中心を空白にした円を作り出す。
躊躇いや、止める間もなく、太股に重さを感じ、洋紙が俺の唇に………美魅にキスをされてしまった。
………契約と言えば、そういう方法がって考えなくもなかったが………それ以外にもあるだろうが!……………まあ、相手は猫だし………カウントには入らないか………。
そう思った時、
「うそ!?」
西島さんの驚く声と共に、太股に掛る荷重が一気に増え、洋紙がすうっと消えた。
そして、俺は目を見開いて驚く事になった。
何故なら、俺の目の前には、見知らぬ目を瞑った女性がいて、俺と………唇を重ね合わせていたからだ。