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第一章『武霊のある町』8

  ★美羽★

 あまりにも反応がなかったので、近付いて大声で呼びかけたら、夜衣斗さんは思いっきり仰け反った。

 ……面白い。

 顔を近付けたくらいで、こんな反応をする人……私の周りにはいないなぁ。

 なんて思いながら、私は大橋の向こうに見える星波学園を指差した。

 「あれが星波学園です。電車からも少し見えたでしょうけど……すごいでしょ?」

 小中高大のそれぞれの校舎に、それぞれのグランド、各部活動・サークルに必要な設備、学生寮など、普通の学校だとありえない光景が、橋の先にはある。

 でも、設備だけ見てもすごい学校なんだけど、町の外にはその凄さは伝わっていないし、武霊に関係したごたごたのせいで、生徒も全国に知られるほどの活躍が出来ていない。去年の野球部なんて地区予選落ち。他の部活も、みんなそんな感じなんだよね……だって、武霊使いの密集度が『最も高い』のが、星波学園だから。

 それを夜衣斗さんに言うと、夜衣斗さんは物凄く嫌そうな感じになった。


  ★夜衣斗★

 ちょっと考えれば、気付く事だった。

 武霊使いになる過程と条件が最も揃いやすい場所をだ。

 そう、それは学校。そして、星波町で唯一ある学校が、星波学園。

 俺が明日から通う学校だ。

 ……なんだか、胃がきりきりしてきた。

 役場の自意識過剰な所はあっただろうが、星波学園では間違いなく注目を集めるだろう。なんせ、武霊使いが大勢いる所だ。昨日のはぐれ発生に対応した武霊使いが、あの空中線を目撃していないはずがないだろうし……色々と嫌な想像ばかり出てくるな……家の帰りたい。

 「大丈夫ですよ。いざとなったら、私が夜衣斗さんを守ってあげます」

 いざとなったらって……やっぱり武霊に関するトラブルが絶えない場所なのか。

 「だって、武霊使いとしては、私が先輩ですからね」

 そりゃそうだ。昨日は武霊の相性の問題があったからコウリュウの強さは正確には分からないが、どう見ても、物凄く強そうだ。

 「じゃあ、明日から学校でもよろしくです。夜衣斗先輩」

 ……先輩?

 「高二だって、春子さんに聞きましたよ。私、高一なんです。だから、先輩って事で」

 ……名前で呼ばれるのも居心地が悪かったが、今更先輩って呼ばれ始めるのも更に居心地が悪い。

 「……出来れば、先輩って言うのは……」

 「はい。勿論、そのつもりです」

 先輩呼びを止めて貰おうとしたら、そう即答された。

 ……からかわれているんだろうか?……まあ、悪い気はしないが。

 俺は溜め息を吐き、明日から通う学園を見た。

 規模がでっかいせいか……なんだかやたらと異質に感じる。

 「じゃあ。今度は私のとっておきの場」

 不意の突風が起こり、美羽さんの言葉が不自然に途切れた。

 何事かと隣を見ると、美羽さんがいなくなっている。

 どこに行ったのか探す前に、海の方で何かが落ちる音がした。

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