第三章『奪われたオウキ』31
★美羽★
自警団・警察・武装風紀の三組織合同救出作戦。
今までこんなに早く三つの組織が一緒に集まって行動を起こした事はなかった………それは、夜衣斗さんのオウキの力が、とてつもないからで……もし、悪意を持って使われた場合、普通の武霊に比べて汎用性が高過ぎて、どれだけの被害が町に、学園に出るかわからない。
それに、もう一つ懸念されている事があった。
それは、鬼走人骸の武霊使いの数。
前に奴らが町に来た時は、武霊使いは五・六人しかいなかった。でも、警察署を襲った武霊使いの数は三十人以上。
これは先月の容疑者黒樹夜衣斗で使われた可能性があるって、夜衣斗さんが言っていた強制武霊使い覚醒薬を奴らが大量に保持している・使ってるって事になる。
だから、時間を掛ければより多くの、場合によっては五月雨都雅が使った武霊使い強化薬を使用されて………手の付けられない状況になりかねない。
そう美春さんが判断して、こんなに早く三つの組織を纏め上げた。
………いつも思う事だけど、美春さんって、とんでもない人だよね………自警団と微妙な対立関係にある武装風紀や、立場的に二つの組織と一定の距離を置いている警察を短時間で纏め上げる…………どうやったら美春さんみたいになれるんだろう?…………私なんかじゃ無理か。
そんな事を無理矢理考えつつ………夜衣斗さんへの心配と不安を抑えていた。
それでも、先行部隊である自警団の精鋭部隊と共に廃工場に近づくにつれ、否応なしにも心配と不安が強まってきて………嫌な予感も強くなってきた。
廃工場の周囲の民家には、常駐していた警察(鬼走人骸対策の一環で)の指示で避難済みで………不気味な静けさが漂っている。
緊張が表に出ていたのか、美春さんが私に近付き、微笑み掛けてくれた時、突如として静寂の中にバイクの爆音が響き始めた。
来た!待っててくださいね夜衣斗さん。今、助けに行きますから!