第三章『奪われたオウキ』30
★夜衣斗★
自身の武霊にオウキが入った事を確認した頂喜武蔵は………笑みを浮かべた。
背筋が寒くなる様な笑みを。
その笑みは簡単に次の行動を予見出来る笑みで………だから、俺は反射的に、『命を掛けた』。
美魅!お願いだ。
俺の心の中の呼び掛けに、俺の胸から美魅が現れ、男達がそれにリアクションを取るより早く、俺がイメージした通りに………首筋に鋭い爪を置いてくれた。
「白い猫の武霊だと?二体以上武霊を持つ奴なんて聞いた事がねえが………何のつもりだ」
周囲が驚いているのにたいして、全く驚いていない頂喜武蔵のその問いに、俺は笑みを浮かべた。
「決まってる。俺や、西島さん。そして、ひよりさんを傷付ける様な行為をすれば、俺は今ここで、首を掻っ切り死ぬ」
俺のややぷっつん気味の覚悟の言葉に、周りが動揺する中、頂喜武蔵だけは笑みを浮かべた。
「なんで俺がそんな事に応じなきゃならね?」
「オウキの力が必要なんだろ?いくら他の武霊使いから武霊を借りれるからと言って、雑魚ばかり集めたんじゃ星波町の総力に勝てるわけがない。だが、オウキがあれば、話は別。だから、俺をさらい。『ついでの』人質として西島さんをさらった。違うか?」
「っは!」
俺の問いに、頂喜武蔵は鼻で笑い何かを言おうとした時、着信音が聞こえ始めた。
その着信音を聞いた頂喜武蔵は大きな舌打ちをし、
「いくぞ」
そう言って頂喜武蔵は部屋から出ていった。
男達も頂喜武蔵にぞろぞろと付いてって、最後の一人がカギを閉める音が聞こえ…………俺はため息を吐く。
警察署を襲撃したんだ。そんな危険な連中を自警団や警察が放って置くわけがない。
事が事だけに、場合によっては武装風紀も参戦しているかもしれないが………何にせよ。星波町側が動いたってことだろう。多分、その合図がさっきの着信。
これで助かる可能性が飛躍的に上がったが……それでも……このままだと、オウキが多大な迷惑を……いや、場合によっては最悪な事態も起こしかねない……それだけは何とかしないと……………ってか、何とか出来るのか?今の俺に………
武霊を奪われ、手錠を両手足に掛けられ床に転がされている自分を再確認し、俺は深いため息を吐かざる得なかった。