第三章『奪われたオウキ』29
★飛矢折★
警察・自警団………そして、事態の深刻さから、武装風紀までが加わった混合救出部隊。
赤井さんや統合生徒会長までいるその部隊をあたしは遠目に見ていた。
団長さんに、
「夜衣斗君の力を借りれない君を連れていく事は出来ない」
そう言われ、警察署の前の歩道橋の上で部隊の救出作戦の説明を見るしかなくなった。
……確かにあたしだけだと純粋な武霊戦では役に立たない………でも、それ以外なら………
あたしが悔しい思いをしている間も、拡声器を持った団長さんが作戦の説明は続けていて、気になるあたしはそれを全部聞いていた。
「作戦はシンプルだ。私を中心とした自警団メンバーが囮となって鬼走人骸と正面から戦っている間に、三島を中心にした武風は側面から強襲。それで連中を壊滅出来るならそれでいいが、最悪………黒樹夜衣斗のオウキと戦う事になる」
団長さんのそこ言葉に、この場にいる武霊使い達が騒然となる。
そうだよね……あのオウキを相手にしなくちゃいけないなんて………最悪以外の何物でもないよね……そうなってない事を祈るばかりだけど………そうなってないって事は、黒樹君の身の安全が確定出来ないってことになるし………
「不安なのは分かるが、遅かれ早かれ救出が間に合わなければ戦う事になる事は避けられない。なら戦力も事前周知も住んでいる今が戦うなら戦うべきだと私は思う」
その団長さんの言葉に、ざわめきが段々と収まった。
武霊なんて存在がいるせいか、この町に住んでいる関わっている人達の切り替えは普通の人達に比べて速い気がしていたけど………いい事なのか、わる事なのか………
「では、話を続ける。自警団と警察が鬼走人骸を抑えている間に、東山を中心にした警察が廃工場を探索。黒樹夜衣斗・西島さゆり。可能なら西島ひよりの救出。特に夜衣斗君の救出は最優先とする。これはオウキが奪われている可能性を考慮しての事で、万が一、奪われていた場合は」
「あら?この気配は飛矢折さんね?」
不意に背後から声を掛けられた。
気配が全く感じられなかったから、驚いて反射的に距離をとって自然体の構えにをしてしまう。
その反応に声を掛けてきた女性は………あたしのクラス担任の高木弥恵先生はクスリと笑った。
「飛矢折さんもまだまだね」