第三章『奪われたオウキ』24
★???★
生じた爆発により、部屋の壁が壊れ、夕闇に包まれようとしている外が見える。
爆炎により燃え始める部屋に、炎の怪鳥の様な武霊を身に纏った頂喜武蔵が空いた穴から入ってきた。
爆発で壁まで吹き飛ばされた賢治は、朦朧とする意識の中で、部屋の中を確認するが、そこには頂喜武蔵以外いない。
爆発が起きる直前、賢治に化けていた男が、さゆりに向かって飛びかかったのは見えた。
つまり、
(何らかの武霊の能力で連れ去られてしまったわけだ。まったく………いやいや、ホント……)
そう賢治は心の中で呟き、へらっと笑い。
「どうもおいたがし過ぎる様だな?え?ガキが!」
いつもの賢治ではありえないほど激情にかられた顔になって、どすの利いた声を発した。
間髪入れずに、頂喜武蔵に向けて躊躇なく十字銃のトリガーを引く。
頂喜武蔵はそれを腕の羽から出る炎で防御しようとするが、その炎ごと部屋の外へと吹き飛ばされる。
十字銃から撃ち出されたのは、実弾ではなく、強力な衝撃波だった。
「安心しろ。全身打撲程度ですませてやるよ」
そう言って、空中で何とか体勢を整えた頂喜武蔵に銃口を向ける。
が、銃口を向けた頂喜武蔵が、笑っているのに気付いた賢治は勘に任せて横に跳ぶ。
それとほぼ同時に、部屋の炎が狼の姿に変化し、賢治が直前までいた場所に飛び掛かってきた。
反射的に炎の狼に十字銃を撃つが、炎の狼は一瞬だけ飛散して、周囲に炎を撒き散らして狼の姿に戻ってしまう。
それどころか、撒き散らされた炎も狼に変化し始めた。
「………なるほど、これは俺の武霊では相性が悪いな」
十字銃が撃てる弾丸の種類は、実弾・炸裂弾・衝撃波・レーザーの四種類で、十字部分を回転させる事によりそれを選べる。他にも十字部分から剣の様にレーザーを出す事が出来るが、そのどれもが炎の狼とは相性が悪かった。
頂喜武蔵は、それを計算して炎の怪鳥の武霊を借りているのだろう。
「ッチ。仕方がない」
賢治は空を飛んでいる頂喜武蔵に衝撃波を連射し、それをあっさり避けた頂喜武蔵が再び賢治を視界に収めようとしたが、見えたのは脱兎の如くその場から逃げている賢治の後姿だった。