第三章『奪われたオウキ』21
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警察署で保護されている西島さゆりは、用意された部屋の中で溜め息を吐いていた。
娘のひよりが行方不明になってから、警察に捜索願を出したが、只の家出として扱われ、まともに取り合ってくれなかった。
実際に最初はただのプチ家出だったのは、ひよりの友達からも確認できた。
でも、泊めて貰っていたその友達に、家に戻ると言って以降の足取りが全く掴めなかった。
それを警察に言っても、やっぱりまともに取り合ってくれず、仕方なく自分で心当たりを一つ一つ探し、それでも見付からなくて、近くの町を一つ一つ探し………ようやくひよりを見付け………恐れていた以上の事になってて、さゆり個人ではどうにも出来ない状況になっていた。
助けたくても、あんな化け物を使える人間相手に、どうする事も出来ない。
幸い、この町の警察は他の警察より幾ばくか行動的だが、あのふざけた刑事に任せて大丈夫なのか?っと言う心配があった。
もっとも、仮に助けに行ったとして、逆に捕まって、娘と共々最悪な目に遭うか……殺される可能性だってある。
そんな危険な奴らの所に娘が………それを思うと、いてもたってもいられなくなるが、大人としての冷静さか、我が身可愛さか、一人でも助けに行くに行けなかった。
そんな所が、娘と自分にすれ違いを呼び、こんな事になったのでは?
っと言う考えが浮かび、溜め息を吐くのを止められない。
何度目かの溜め息の後、ふと昨日自分を助けてくれた少年の事を思い出す。
僅かな間だったが、その僅かな間で、少年はよくため息を吐いていた。
あの子なら………もしかしたら……助けてくれるかも………。
そんな思いが浮かんだが、さゆりは直ぐに首を横に振った。
どんなに凄い力を持っていても、あの子は子供。こんな危ない事に関わらせるわけには………。
そう思ったからだ。
だけど、本当にここの警察に任せるだけでいいのか?
そう疑問に思った時、部屋のドアがノックもせずに開き、そこから東山刑事が入って来た。
あまりの無遠慮に、少々眉を顰めつつ、
「何か御用ですか?」
そう声を掛けたが、東山刑事は何も答えず、さゆりに近付こうとし、
「はい。ちょっと待った」
っと言う声に動きを止めた。
さゆりはその声に、耳を疑った。
何故ならその声は、目の前にいる東山刑事の声で、声は東山刑事の後ろから発せられたからだ。
視線を目の前の東山刑事の後ろに向けると、そこには………もう一人の東山刑事がいた。