第三章『奪われたオウキ』19
★夜衣斗★
思いがけない言葉に…………俺は固まった。
言葉自体に驚いた事もあるが、友達になってくれって言われたのは…………初めて経験だったからだ。
(夜衣斗は寂しい人生を送って来たんだわね。泣けるだわね)
大きなお世話だ!…………まあ、何にせよ。
俺は溜め息を吐きつつ、
「俺は出不精で、積極的に誰かと関わろうとする人間じゃないが………それでもいいなら………構わない」
そう言うと、閉じていたドアがゆっくりと、少しだけ開き、楠木が顔を見せた。
「本当に?」
……………なんか………いや、まあ、あまり気にしない事にしよう。
俺はまた溜め息を吐きつつ頷いた。
その頷きを見た楠木の顔が見る見る明るくなり、ちょっとうろたえた様に、
「えっと、その………ありがとう」
っと笑顔で言った。
★飛矢折★
早めに部活を切り上げて教室に戻ると、教室の前に赤井さんがいる事に気付いた。
あたしの事に気付いた赤井さんは、早歩きで近付き、
「巴先輩。夜衣斗さんを知りませんか?」
っと言ってきた。
?。
「……武装風紀の手伝いに行ってるんじゃないの?」
あたしの問いに赤井さんは首を横に振った。
「スカウトサーバントが飛んでますから、手伝いをしている事は間違いないんですけど、夜衣斗さんがどこに行ったかまでは知らないみたいです」
「そうなの………あたしはてっきり武装風紀と一緒に行動しているとばっかり………」
「そうですか………」
あたしの答えに、赤井さんは明らかに落ち込んで………どこか不安そうだった。
「どうしたの?」
「え!?」
「何か不安そうにしているから、何かあったのかな?って」
「……何もないですよ………ただ」
「ただ?」
「何だか……嫌な予感がするんです」
嫌な予感?………武霊使いの勘はよく当たるって言うし………大丈夫かな……黒樹君……