第三章『奪われたオウキ』18
★???★
「これでいいんだわね?」
「はい。ありがとうございます美魅様」
「わからないだわね。なんで嘘を吐く必要があるだわね?」
「時期ではありませんし、それに、私達が何であるかは夜衣斗が自分自身で気付き、『思い出さなくてはいけない事』ですから」
「………厄介だわね………それで夜衣斗が死んだら元も子もないだわね」
「その時はその時です」
「あなたはそれでよくても、あたいはそれじゃ困るんだわよ」
何を言えばいいか、自分で呼んでおきながら、久思は言葉に詰まった。
そもそも来るとは思ってなかったから、仕方がないと言えば仕方がないが、散々迷った挙句、夜衣斗の方からも声を掛けてくれないので、いるかどうか不安になりながら、久思はドア越しに声を掛けた。
「………いるよ」
っと夜衣斗の声がドア越しから聞え、ほっと一息吐く。
もっとも、やっぱり何を言えばいいか思い付かなかったから、久思は真っ先に浮かんだ疑問を聞く事にした。
「……僕が呼んどいてなんだけど、どうして来てくれたの?」
その久思の質問に、夜衣斗がドア越しに溜め息を吐いたのを久思は聞いた。
「………さあ?」
「さあ、って………」
「………正直に言えば、俺は君がどうなろうと知ったこっちゃない」
わざわざ来ておきながら、そんな身も蓋もない事を言う夜衣斗に久思は苦笑した。
「………ただ、君がここにこもる事は勝手だが………それで何が起こるかを考えるべきだと俺は思う………少なくとも、心配してくる人がいる内は」
………心配してくる人………。
「………まあ、好きにすればいいさ」
投げやりだけど、どこか心配している感じのある口調に、久思はまたしても苦笑してしまった。
夜衣斗の本当の真意は久思には分からないが、少なくとも言葉とは裏腹に多少の心配しているのは間違いない。
「………っで?俺に何の用なんだ?」
その夜衣斗のもっともな質問に、久思は少し混乱し始めた。
夜衣斗に正直にあの薬物の事を話す事は出来ない。
もしかしたら夜衣斗なら何とかしてくる気がしないでもないが、それほど関わりのない他人の為にわざわざ家に着てくるような優しい彼を自分のトラブルに巻き込むのは気が引けた。
かと言って、それ以外に彼を呼んでしまった理由はなく………少々てんぱって、思わず、
「あの!僕と友達になってくれませんか!?」
っと恥ずかしい言葉を、出会ってから心に秘めた事を口にしていた。