第三章『奪われたオウキ』14
★夜衣斗★
少し不味い状況になったかもしれない。
(どうしてだわよ?)
状況から考えて、三島さんの要請は断れない。
(断わっちゃえばいいだわよ)
………理由がないだろうが………断る理由が………それに、断る気も……起きない。
(まあ、そうだわね)
正直、毎回毎回状況に流されて行動するのは嫌だが……まあ、それが俺の『今の』運命なんだろう。………っで、そうなると、朝昼晩、俺は大量の意志力を消費する事になる。いくら俺の意志力の回復が早いからと言って、はたしてあの男に勝てる力が残ってるかどうか………。
(それは平気だと思うだわよ?)
?……どう言う意味だ?
(更に回復力が上がってるって意味だわよ)
はぁ?なんで?
(ん〜上手く説明できないだわよ。あたいはそう言う事に詳しくないだね)
………まあ、それならそれでいいんだが………少し思い当たる事もあるしな………多分、サヤがやってた妙な事に関係あるんじゃないか?
(多分そうだわよ)
………結局、あれはなんだったんだろう?
そう思った時、
「黒樹君。ちょっといい?」
飛矢折さんに呼ばれ、視線を向けると、飛矢折さんは教室の入り口の方に顔を向け、
「黒樹君を呼んでる人がいるんだけど……」
飛矢折さんの視線の先には………見知らぬ女子が、制服からして同学年の様だが………とりあえず俺は飛矢折さんに頷き、その女子の所まで移動。
「いきなりごめんね。どうしても黒樹君にお願いしたい事があって、あ!断って置くけど、部活の勧誘とか、そう言うのじゃないからね」
……まあ、そりゃそうだろう。今まで部活の勧誘とかが飛矢折さん越しに行われた事はないし、頑なに勧誘を断るので、大体の部活が俺の勧誘を諦めている。
「私は春咲 茜。隣のクラスのクラス委員をしてるんだけど………黒樹君。楠木君と面識あるよね?」
楠木?………ああ、あの楠木久思の事か……。
気弱そうな顔を思い出しながら、俺は頷いた。
隣のクラスだったのか………その割には、あれ以降姿を見ていないな………。
「彼、来塚君が逮捕される前日から学校に来てないの」
……………ん?前日に?
その疑問が頭の中に浮かんだが、春咲さんの次の言葉に、その疑問の事を考える事が出来なくなった。
「それで………黒樹君。私と一緒に彼の家に行ってくれない?」