第三章『奪われたオウキ』13
★美羽★
翌朝の夜衣斗さんは、会った時からずっと何かを考えている様だった。
私が呼び掛けても、上の空の返事だったり、返事がいつも以上に遅くて……………何を考えているんだろう?やっぱり鬼走人骸の事を?
そんな事を思いながら一緒に学園大門の前まで行くと、大門の前に武装風紀委員長の三島さんがいた。
………私、この人の事、あんまり好きじゃないんだよね………表面上はいい人って感じで、誰からも頼られているけど………なんて言うか、私にはそこに薄っぺらい感情しか感じられないんだよね………まるでそうした方が効率がいいみたいな、機械的な感じがすると言うか………でも、この感覚は、あんまり共感を呼ばないんだよね………琴野を含めた僅かな武霊使い以外は……………。
チラッと夜衣斗さんを見ると、歩きながら夜衣斗さんも三島さんを見ていた。
あまり好きそうな雰囲気は出していない。
……もしかしたら、夜衣斗さんも同じ事を感じているのかもしれない。
そう思った時、三島さんが軽くこっちに手を上げ、私達を呼び止めた。
「やあ、待ってたよ」
そう微笑みもせずに鋭い目を夜衣斗さんに向けた。
★飛矢折★
朝練を終え、教室に戻ると、黒樹君が腕を組んで何事かを考えている様だった。
考え事をしているのはいつもの事だけど、今日の黒樹君は、何だかいつもと違う感じで………村雲君も声を掛けずらそうにしている。
「何かあったの?」
とりあえず席に座っている美幸に聞くと、美幸は困った顔をして、
「何か、武装風紀に協力要請をされたみたい」
「武装風紀に?なんで?」
「うん。何かね。星波町に鬼走人骸がまた来たんだって………巴も知ってるでしょ?鬼走人骸」
「そりゃ………」
何人か下っ端を潰した事があるから、よく知ってる。って危うく言いそうになった。
不意に言い淀んだあたしに美幸は不思議そうな顔をしたけど、流石にそんな事を美幸に言えば心配されるに決まっている。
うちの家は、家族全員が武術をやってて、当然、上二人下二人の兄弟達も強い。
だから、よく近所の不良達に襲い掛かられる事があって、そのとばっちりがあたしにも向いていた事がある。
まあ、もっとも、そんな事があったのは、鬼走人骸が『ただの暴走族』だった時の話で、今のリーダーになってからは一切そんな事は無くなった………っと言う事は、あんまり知らないって事になるのかな?………まあ、美幸が言ってるのは噂レベルの知ってるかどうかだろうし、そのくらいだったらあたしも知っている。
「でね。鬼走人骸対策の一つとして、黒樹君のオウキを使いたいんだって。ほら、オウキにはスカウトサーバントって言う便利なのがあるでしょ?」
………そっか、確かにオウキの機能を使えば、登下校中の生徒を監視して鬼走人骸の接触を防ぐ事だって簡単に出来るかも知れない………じゃあ、黒樹君はその事について考えているんだ…………でも、その割には……妙に………
どうもぬぐえない違和感に、首をひねっていると、教室に先生が入ってきたので、その事を深く考えるのをあたしは止めた。