第三章『奪われたオウキ』5
★夜衣斗★
「何!何なこれ!」
オウキを見て驚くひよりさんのお母さん。
っと言う事は、少なくともひよりさんとそのお母さんも、この町の住人じゃないわけだ………
「おい。帰るぞ」
そう言って大男はひよりさんの鎖を引っ張ると、ひよりさんは、
「おいで……アリス」
と呟き、背後から小さな女の子………あきらかに不思議の国のアリスが基となった女の子が出てくる。
それと共に、アリスが何もない空間に手をかざすと、何もない空間に扉が現れた。
「ひより!」
自分の母親の呼び掛けに、ひよりさんは無反応で、アリスが開けた扉の中にふらふらと入ろうとする。
どう見ても、瞬間移動系の能力!
ってか、させるかよ!
そう思って、シールドサーバント具現化させようとした時、不意にガチャポン機の武霊が、自身のレバーを回し、カプセルを出した。
そのカプセルに収まっていたのは、某特撮番組で敵として登場した怪獣……の人形で………確か………その能力は………。
出てきたカプセルが勝手に開く。それと同時に、ガチャポン機武霊の姿が、瞬時にそのカプセルの中にあった怪獣の姿になった。
まずい!
そう思うと同時に、シールドサーバント六機の具現化が終わるが、ひよりさんを保護するより早く、怪獣となったガチャポン機武霊が吠え、その能力を発揮し、急激な重力増加に襲われる。
増加した重力に、シールドサーバントは落ちて地面にめり込み、オウキと俺は膝を付いた。
「くぅ……な、何?」
ひよりさんのお母さんにも増加した重力が掛かってるのか、苦しそうな声を上げる。
オウキが動けなくなるぐらいの重力だ。ヒーラーサーバントの力場で保護しているから、その程度で済んでるんだろうが………。
「へぇ?これで死なねぇんだ。おもしれえな」
こいつ!やっぱり俺達を殺す気だったか。
「まあ、いいさ。薬。欲しくなったら廃工場に来いよ?俺らは暫くそこにいるからよ」
そう言って大男はひよりさんを引っ張り、扉の中に入った。
扉が閉まると同時に、ガチャポン機武霊が霧散し、増加した重力も消える。
「ひより!?ひより!ひより!?」
状況に付いていけないのか、混乱した面持ちでひよりさんを探し、名前を呼ぶひよりさんのお母さん。
その姿に、俺は拳を握り締めるしかなかった。
何もかも………最悪だった。