第三章『奪われたオウキ』4
★夜衣斗★
………こんな奴にまで俺の事が知れ渡ってるのか…………最悪以外の何物でもない。
そんな事を思いながら、オウキでガチャポン機武霊を牽制しながら、ヒーラーサーバントを具現化。
倒れているひよりさんのお母さんの治療しつつ、俺は服を普段着から、PSサーバントに『戻した』。
五月の終わり頃に容疑者にされてから、俺は常に起きている時はPSサーバントを身に着ける事にしている。
まあ、要はその頃からより自分が死の運命と相対し易い事を自覚したと言うわけだ。
っで、その用心は、あっさり的中し………また、明らかに狂人と呼べるような奴と相対している。
………最後の敵からの連絡はないが…………どう考えても、こいつが次の宿命の悪意………な気がしなくもない。
「てめぇとは、まだ遊ぶ気はなかったんだがなぁ?」
そう言いながら、大男はズボンのポケットから、小さなスプレー缶を取り出し、悲鳴を上げ続けるひよりさんにそれを吹き掛けた。
その途端、ひよりさんの瞳から再び輝きが消え………ぼーっとし出し、ふらふらと立ち上がる。
何だ?………噴霧式の麻薬?
その疑問が外に出てたのか、大男は俺にスプレー型を見せ付ける様に振る。
「こいつは『忘却剤』。嗅げば一瞬で全てを忘れる薬さ」
……そんな薬があるなんて聞いた事がないな………あれば話題になってるだろうし………っとなると武霊が作った薬って事か………
「嫌な事も、嫌なしがらみも、何もかも忘れられるからな。嫌な事から逃れたい現代人には受けがいい。俺達の主力商品って奴さ。どうだ?一つ買うか?安くしとくぜ?」
大男は、そんなふざけた事を言ってくる。
そんな時、ひよりさんのお母さんが呻き声を上げて目を覚ました。