第三章『奪われたオウキ』1
★???★
気持ちいい。
気持ちいい。
ああ、なんて気持ちいいんだ。
悲しみ、
憎しみ
怒り、
恐怖、
向けられる負の感情全てが、気持ちいい。
悲しみに沈む顔、
憎しみに歪む顔、
怒りに満ちた顔、
恐怖におののく顔、
ああ、どれも気持ちいい。
もっとだ!
もっとだ!
もっと気持ち良くさせろ!
土砂降りの雨の中、次々と自警団の武霊を倒すオウキ。
高笑いを上げて幸野美春を踏み付けている大男。
頭から血を流し気絶している赤井美羽。
その美羽を背中に背負って走る飛矢折巴。
ぼろぼろでうつろな表情を見てる少女。
その少女の前で、少女に似た面持ちの女性が複数の男達に押さえ付けられ、ナイフで少しづつ服を切り裂かれる。
両手両足に手錠を掛けられ、身動きの取れない黒樹夜衣斗。
オウキを身に纏った大男。
その後ろに続く、何十体ものレベル2の武霊。
町を守る為に総力を挙げて対峙する自警団と武装風紀。
身動きの取れない夜衣斗を何度も何度も蹴り、踏み付ける少年。
抵抗すら出来ない夜衣斗は鈍い音を発し続け、床に血を
そこで彼は目を覚ました。
(なんてタイミングで予知夢を見るんだ………)
あまりのタイミングの悪さに、彼は額に手を当て、深い溜め息を吐く。
(どれも決定的な場面ではなかったが………どう見ても最悪な結末しか導き出せない)
彼はベットの隣に置いてある電動車椅子に腕力だけで乗り、備え付けているパソコンを起動させた。
(本当にどんどん予知が使えなくなっているな………それほど彼が本来の運命をかき乱していると言う事なんだろうが………それを喜ぶべきか、悲しむべきか………)
起動させたパソコンをしばらく操作していた彼は、再び深い溜め息を吐いた。
(やはり監視が再開されているか………これは誤魔化すのに時間がかかるな………いや、そろそろ僕も、運命の選択をしなくちゃいけないと言う事なんだろうな……………)
そう思った彼は、とてつもない速度でパソコンを操り出した。
黒樹夜衣斗へ、最後の敵として、最後のヒントを送る為に………