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間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』48

  ★夜衣斗★

 あまりの衝撃の連続に、抵抗する気力さえなくしたのか、博は大人しく東山刑事に手錠を掛けられた。

 その手錠には留置場に書かれている武霊封じの文字が書かれてて、掛けられると武霊が出せなくなる仕様になってるみたいだった。

 ………これからこいつはどうなんだろうな………普通に考えれば、普通の殺人事件として偽装するんだろうけど………。

 東山刑事が呼んだパトカーに博が乗り込む直前、不意に立ち止まり、俺を見た。

 「黒樹夜衣斗………お前はこんな力を持っていながら、なんで何もしないんだ?………同じ痛み、同じ恐怖、同じ悲しみ、同じ怒りを持ってて………何で正義の味方になろうとしない?」

 淡々と、そんな事を言ってくる。

 そこには何の感情もなく……あるのは只の疑問って感じだった。

 ………その疑問に応える答えは俺の中にある…………だが、それは複数で………きっと博は納得しないだろう。

 人は大体、一つの答えを求めたがるものだし、その結果が博の殺人さえいとわない正義だったのだろうから……………。

 優柔不断なのは分かっているが、一つの答えに纏める事が、いつも正しいとは限らない。

 だから、俺の中の答えは、博の行動を肯定も否定も出来て………だが、まあ、少なくとも、

 「………決まってる………俺は、お前じゃないからだ」

 それだけは強く言える。

 その答えを聞いた博は、どこか怒ったような、どこか寂しそうな顔をして、パトカーに入った。

 パトカーを見送りながら、俺は深い溜め息を吐いた。

 自分が殺人者になる可能性をありありと見せ付けられたような気がする。

 正直に言えば、博が殺した不良が殺された事実を知った時、殺人を否定する言葉はわかず、当然の報いだとか、俺が殺してやりたかったとか、浮かんで………ただ切り殺されただけと聞いても、なんて勿体ない殺し方をするんだっと思い、自分が知り得る拷問の方法さえ思い描き、オウキを使った無限拷問さえ考え…………まあ、それはオウキの装備を色々と試していた時に考えたんだが………中学の時に俺をいじめた連中をネタに…………考えた。

 もっとも、その浮かんだ負の考えは、直ぐに否定出来たが………完全に否定出来たとは……言えないな。

 (大丈夫だわよ)

 不意に美魅が心の中で語り掛けてきた。

 (夜衣斗は、優しいんだわよ。だから、大丈夫だわよ)

 …………優しいね………………………まあ、確かに…………悲しむ顔を見たくないかな?

 俺の頭の中に、悲しい顔を見たくない人達の顔が浮かんだ。

 最近はないが、負の感情に囚われた時、よく家族の顔が浮かんで、負の感情をギリギリの所で抑えていたが………今は………どうやらその顔が増えたらしい。

 そう思って、ちらりと後ろを見ようとして………何だか恥ずかしいので……止めた。

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