プロローグ3
けたたましくなり続けるサイレン音に、俺は思わず耳を塞いだ。
そこで携帯が振動しているのに気付く。
叔母からだ。
サイレン音で聞こえるか不安だったが、とりあえず電話に出る。
「はや どこ い にげ な い」
案の定所々しか聞こえず、眉を顰める俺。
するとサイレン音が止まり、今度は落ち着いた女性の声がスピーカーから聞え出した。
「「星波海岸にて『はぐれ』の発生を確認しました。市民の皆様は、自警団が『はぐれ』を駆除するまで家もしくは建物の中から出ないでください。また、外出中の人は、すぐに近くの家や建物に避難してください。繰り返します。星波海岸……」」
……意味が分からない。はぐれ?自警団?駆除?………冗談に聞こえないから、なお訳が分からない。………とにかく、携帯の方に耳を集中させよう。
「ちょっと聞いてる夜衣斗ちゃん!夜衣斗ちゃん!」
携帯から切羽詰まったような、先程ののほほんとした叔母とは思えない声が聞こえてくる。
「聞いてますよ」
「放送は聞いた!?」
「ええ、ど」
どう言う意味ですか?と聞く前に、叔母が早口で喋り、遮る。
「いい?さっきは説明しなかった。と言うか、『出来なかった』。と言うより、こんなに早く『次が来る』。ああ!そんな事を言いたいんじゃなくて、と、とにかく、今、外は危険なの!近くに人がいる家はない?あったらすぐに中に入れて貰いなさい!家の中なら『はぐれ』に襲われる事はないから!」
「だから、そのはぐれってなん」
ですか?と言おうとして、俺は固まった。
ズッチャと音を発てて目の前に何かが落ちてきて、それが視界にはっきりと入ったからだ。
「あおぉぉおおぉぉん」
それは歓喜だろうか?それは俺を見て、空気が震えるような遠吠えをした。
それは『犬』だった。
ただし、『全身に黒く千切れた鎖を巻き、全身から炎を噴き出す骸骨の犬』。
あまりの出来事に、俺は身体のみならず、思考も止まってしまう。ただ、
「逃げなさい!早く!!」
そう言う叔母の声だけが、頭の中に響いていた。




