間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』45
★???★
こいつは何なんだ!こいつは一体何なんだ!
博は心の中で絶叫していた。
対峙している黒樹夜衣斗とその武霊オウキ。
夜衣斗自体は大した事はない。
博はそう思ったが、その後ろのオウキが圧倒的過ぎて………どうするべきか、どうしたらいいか、思考がぐるぐる回り、怒りや、恐怖や、後悔や、憎しみとか、溢れ出す様々な負の感情で視界が歪み、気持ちも悪くなる。
夜衣斗は何も言わない、何もしない。
それがより負の感情を煽り、一歩、二歩と博は後ろに下がり始め、シャドウリベンジャーに背中をぶつけてしまう。
そこでハッと気付いた。
シャドウリベンジャーの能力なら………逃げられる!
その思考を読んだシャドウリベンジャーは、博を抱き抱え、影の中に入ろうとするが、その瞬間、
「セレクト。ライティングサーバント」
夜衣斗はオウキから白い球体のサーバントを出した。
そして、シャドウリベンジャーが影に入るより早く、白い球体が眩い光を発し、影を消し去ってしまう。
「………っで?次はどうする?」
その夜衣斗の言葉に………博は理解した。
夜衣斗は一つ一つ可能性を削ぎ、抵抗する気力さえなくす様に心を折ろうとしている事に。
何なんだよ………本当に、何なんだよこいつは………。
シャドウリベンジャーにゆっくりと地面に下ろされる博。
そこで博から具現化を維持する気力さえなくなったのか、シャドウリベンジャーはゆっくりと霧散して消えてしまう。
「………警察に行こうか………」
そう言う夜衣斗に、博は抵抗すら出来るはずはなく………ただ、
「俺は……正義の味方だ…………正義の味方になったんだ!」
そう絶叫するしかなかった。
その絶叫に、夜衣斗は特に嘲るでも、否定するでもなく、無反応のままオウキの具現化を止め、博から背を向けた。
そして、歩き出そうとした時、不意に足を止めた。
不審に思って夜衣斗の視線の先に目を向けると、飛矢折巴が駆け寄ってくる所だった。
「………どうしました飛」
矢折さん。っと夜衣斗は最後まで言えなかった。
何故なら、いきなり巴に抱き付かれたから………そういう風に博には見え………直ぐにそれが間違いだと気付く。
夜衣斗はゆっくりと倒れ………地面に血の海を作ったからだ。
何だよ!何なんだよこれは!?
自分をあっさり無抵抗にした夜衣斗が、あっさり殺された。
その目の前の光景に、博はただただ呆然とするしかなく………そこに赤井美羽達と………もう一人の飛矢折巴が現れた。
もう、わけが分からず、博は笑い出した。
笑い出すしかなかった。