間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』44
★飛矢折★
………大丈夫なのかな?
東山刑事さん達の話を聞きながら、あたしの脳裏に殺意に支配された黒樹君の姿が浮かんだ。
ああなったのは、あの男が黒樹君の酷い過去を刺激したからだけど………今回の犯人も、聞いた予想の限りだと……何だか黒樹君の酷い過去に近い雰囲気を持っている気がして…………不安になった。
もし……もし、夜衣斗君が殺意に支配され始めていたら………遠見をさせなかったのって………もしかして………
もっともなって欲しくない想像をしそうになったので、あたしは慌てて首を横に振って、その考えを頭の中から追い出した。
その際に、隣にいた美幸があたし事を不思議そうな顔で見て、ちょっと恥ずかしかったけど………それでより嫌な想像を頭の中から追い出せた。
黒樹君はそんな人じゃない。それに、昨日だって普通な感じだった。とても殺意に支配され始めている様には………見えなかった。だから、大丈夫、きっと。
そう思って追跡に専念して、しばらくすると…………そこに信じられない光景が………思いもしなかった最悪の光景が………
呆然と立ち尽くして下を見ている………確か、木曜日の放課後に黒樹君と話していた二人の内の一人がいた。
その彼の視線の先には………
道路に広がる血の海。
そこにうつ伏せに倒れている黒樹君。
そして、
「え?」
思わず驚きの声が漏れてしまう。
全員の視線があたしに集まり、血にまみれた包丁を持つ………あたしに再び視線が戻された。