間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』43
★美羽★
「つまり、夜衣斗さんは、自分も犯人の対象になると考えていたんですね。っで、また自分から囮になった」
放課後、巴先輩と美幸先輩と一緒に警察署に行くと、物凄く怒った顔の美春さんと鉢合わせになり、夜衣斗さんが今、自ら囮になってる事を聞かされた。
「いや、多分、東山に誘導されたんだろう」
囮になってる夜衣斗さんを追跡する為にレベル0.5のコロ丸を具現化しつつ、美春さんはそんな事を言った。
あの東山さんが
「誘導?」
あまりにも普段のイメージと違う言葉に、私は首を傾げた。
「あいつは、あんな感じだが、たまにそれを利用して自分の思った通りに動かそうとするからな………」
……それは、
「クズですね」
「クズだな」
「美羽ちゃ〜ん。美春ちゃ〜ん。そう言う事は、本人の前で言わないでくれるかなぁ?」
っとか言い出す東山さんに、私と美春さんはほぼ同時に、
「本人の前だから言ってるんです」「本人の前だから言ってるんだ」
っと言って、東山さんから乾いた笑い声を出させた。
美春さんと一緒に警察署から出て来てたんだけど………美春さんの怒りようから、絶対東山さんが関わってると思って、あえて無視してた。
まあ、でも、あんまり無視し続けられないし………。
「そもそも、何で夜衣斗さんに誰も護衛を付けてないんですか?遠見だってしてないし」
その私の質問に、美春さんは困った顔をし、東山さんは面白そうな顔をした。
「夜衣斗君が言い出したんだよ。万が一囮だとばれると厄介だから、何もしないでくれってさ」
夜衣斗さんが?…………まあ、あの夜衣斗さんだから護衛なんていらないだろうけど………
「遠見もしちゃいけないっと?」
「遠見だって武霊の能力だからねぇ〜。感の鋭い奴ならばれる事だってある。夜衣斗君は、それを警戒してるんじゃないかなぁ〜」
………ん〜?確かにそう言う人もいるって話だけど………そこまで考えているなんて、流石夜衣斗さん。
「まあ、だから、夜衣斗君が出てからしばらくして、コロ丸の嗅覚で追跡しようって話になったわけ。分かったかい美羽ちゃん?」