間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』36
★夜衣斗★
日曜日。
結局、昨日の夜はレーシングゲームを一回やって、多少話をしただけで二人は寝てしまった。
………まあ、俺の為に町中を奔走してくれていたのだから、そうなるのは当り前だろうが……………いやぁ〜、鉄格子がなかったらヤバかった。色々な意味で………。
(夜衣斗はエロエロだわね)
っと言った美魅の言葉が今でも脳裏を離れない…………ええ、どうせ俺はむっつり助平ですよ。って言うか、この二人ももう少し俺を男として警戒してほしい気がしないでも……………まあ、下手に飛矢折さんとかに手を出せば………とってもヤバい事になっていただろうが…………いや、てか、しないけどね。そんな事。
「昨日の夜は動きがなかったみたいです…………」
昨日の結果を聞きに行った美羽さんは、顔を伏せた。
………まあ、予想の範囲内か…………今日もここから出られない事が確定した訳だが……………まあ、休みの日は大体ゲームしてるか、漫画読んでるか、王継戦機とかを書いているかしてないから、別に今の状態なら留置場にいても、いつもの休日と大して変わらない。………だから、
「………そう気に病む必要はありませんよ」
っと言うと、美羽さんは、
「私は怒ってるんです!」
っと顔を上げて怒った表情を俺に見せた。
理由が分からず、思わず飛矢折さんと顔を見合わせていると、
「みんな、昨日の午前までは、夜衣斗さんの事を凄いだの、英雄だの、言ってたのに………」
………そんな事を言われてたのか………勘弁してくれ………。
「今じゃ、みんな夜衣斗さんの悪口ばっかり言ってるですよ!?」
…………まあ、表向きは容疑者だし………悪口を言われるのは当り前の気がするんだが…………これは、月曜日学校を公然と休めてラッキー。とか思ってるって言わない方がいいな………怒りの矛先がこっちに向きそうだ。まあ、とりあえず、
「……美羽さん。俺は知りもしない他人からどう思われていようと気にしませんよ。美羽さんや飛矢折さんが信じてくれるなら、俺は十分嬉しいですから………」
………なんか恥ずかしい事を言ってるな俺。
「夜衣斗さん………」「黒樹君………」
二人はちょっと恥ずかしそうな、嬉しそうな微笑みを浮かべる。
「………それに、悪口だったら聞き慣れてますから」
「そんな事、聞き慣れちゃ駄目です!」「そんな事、聞き慣れない!」
二人同時に怒り、互いに顔を見合わせ、微妙な雰囲気になる美羽さんと飛矢折さん。
………なんだかな………まあ、何にせよ余計な事を言ってしまった様だ。
…………どうも俺は調子に乗ると直ぐにへまをするな…………