間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』35
★飛矢折★
「って事は、その子とは恋愛関係にはないんですね?」
っとあたしが聞きたかったけど、聞けなかった事をさらりと聞く赤井さん。
黒樹君はその質問に慌てると思ったけど………思いのほか無反応で、口元は苦笑していた。
「………本当の兄妹関係ってわけじゃありませんけど、小さい頃からよく一緒にいるんです。そんな事を思った事なんて一度だってありませんよ………それに、最近は直接あってませんからね………向こうも中学生になって何かと忙しいみたいですから………」
っとちょっとさびしそうに言う黒樹君。
………ちょっと分からない感覚かな?私の家は、祖父に、父に、母に、二人の兄、二人の弟がいるから、毎日騒がしくて、家族に対して寂しいって感じた事は………記憶にない……かな?
★???★
「ええ………そうよ。だから、大丈夫だって…………あのね。そうガミガミ怒られてもお姉ちゃん困っちゃうわ………だからね。捕まったわけじゃなくって………はいはい。もう好きにしなさい。じゃあ、切るね」
携帯電話を切った春子は深い溜め息を吐いた。
(………あの子の心配症にも困ったものね…………まあ………でも、このままじゃお姉ちゃんだけじゃなく、あの子にも半殺しにされそうだわ……………まったく、何で夜衣斗ちゃんは次から次にトラブルに巻き込まれるのかしら………)
そう思いながら、春子は携帯をしまい、また深い溜め息を吐いた。
「春子さん?どこに電話していたの?」
隣で春子と一緒に町をうろつかせている不良のリーダーの偽物を見張っていた美春が不思議な顔をしていた。
春子はちょっと困った顔をして、
「夜衣斗ちゃんの………義妹かな?」
そのなんて言ったらいいか分からないっと言った感じの表情に、美春は首を傾げた。
「まあ、夜衣斗ちゃんにも色々あるんです」
そう言って春子は苦笑するしかなかった。