間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』33
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星降り山の山中には、町の人にもあまり知られていない洞窟がいくつかあった。
これらは十年前の、正確には源さんがはぐれになる前に、はぐれによって掘られた穴である為で、更に妙な深さと長さがある。
その為、子供などが不用意に入り迷子にならない様に、存在そのものを秘密にし、折を見ては少しずつ穴を埋めていた。
だが、あまりにも深く長い為、その作業はなかなか完了せず、未だに洞窟は存在し、僅かに洞窟の存在を知っている者に利用されてしまっている。
「クソ!クソ!クソがぁ!」
洞窟の奥の中で、不良のリーダーは絶叫していた。
その傍には全身が鏡の様な人型の武霊がおり、洞窟の中を照らす光を発している。
この武霊は不良のリーダーが幼い頃から見ていたミラーマンと言うCG特撮の主人公キャラが基になっており、その能力は全身の鏡に映った対象に何でも化け、偽物を作り出す事が出来る。その偽物は、ある程度行動パターンを決める事が出来るが、知能はなく、時間が経てば経つほど劣化し、簡単に壊れてしまう欠点を持っている。
それでも、殺人現場から逃げ出すのには十分で、犯人は不良のリーダーも殺したと勘違いしているのは間違いない。
なぜなら、偽物を作り出した直後なら、例えばらばらにされて暫くは形を保っていられるからだ。
だが、それも直に気付かれる。
だから彼はこの洞窟に隠れ、偽物を町中に放った。
その偽物も、今はほとんどが霧散してなくなっている。
恐怖が不良のリーダーの身を焦がし、怒りが湧き上がり、頭をかきむしった。
恐怖の矛先は仲間を殺した犯人に向けられ、怒りは………
「黒樹………夜衣斗…………殺してやる!殺してやる!!」