間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』31
★飛矢折★
黒樹君が言った試して欲しい事は……………見事に成功する。
でも、それを試す前に、まず偽物を探すのに苦労した。
黒樹君に話に行く前に、あらかた見付けて倒しちゃってたみたいで………新たな偽物を見付けた時には、日が暮れてしまっていた。
黒樹君の作戦。それは、偽物が視覚に頼って行動しているなら、光学的な幻影で隠れている場所から釣れ出す事。
そして、今、幻影を使える武霊を使って、偽物は町の中をうろうろさせているみたい。
………これでうまくいけばいいんだけど………。
そう思いながら、あたしは警察署に向かっていた。
日が暮れた後、団長さんにやや強引に帰らされてしまったから、仕方がなく黒樹君の所に向かっている。
手には美幸の家で作らせて貰ったおかずとかご飯と、前に美幸の家に置いて行ったお泊りセット。
つまり、黒樹君を一人であんな留置所に泊まらせるのは忍びないと思って………何やってるんだろ……あたし。
美幸にちょっと強引に促されたからって………ちょっと不味いんじゃ?………。
そんな事を思いながらも、足は警察署に向い、辿り着いてしまう。
そして、同じタイミングで警察署に着いたであろう赤井さんと顔を合わせ………微妙な雰囲気になった。
★美羽★
……なんで巴先輩がここにいるんだろう?………まさか………夜衣斗さんの事が?
何だか顔が赤くなってきた。
私のその反応に、巴先輩も顔を赤くして、
「っち!違うからね!っこ!これは………っそ!そう。お礼よ。お礼」
………お礼って………
「それって……この間済んでません?」
「まだ、全然!全然よ」
「……………」
「っほ!ほんとだからね!」
「……………」
「違うからね!」
………何だか見た目はカッコいい巴先輩がこんなにうろたえるなんて………結構可愛いかも。