間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』29
★夜衣斗★
……………
(夜衣斗。お客様だわよ)
そんな美魅の声に、寝ようとしていた意識が叩き起こされた。
………客だって?…………せっかく人が気持ちよく眠りに就こうとした時に………誰だよ。たく!
眠りを邪魔されたせいで苛立った俺は、がばっと上半身を起こすと、鉄格子の向こうに美羽さんと飛矢折さんがいて、驚いていた。
………あ〜………何やってんだか俺は………
自分の心の狭さに、思わずため息が出る。
「えっと、夜衣斗さん。美春さんから話は聞きました」
………そう言えば、どうせ俺の為に動こうとするだろうから、二人を止めてくれませんか?って団長に言ったけ………って、ここにいるって事は、止まってないじゃん………まあ……そりゃそうか………二人は言って止まる様なタイプじゃない………そう考えると、結構似た者同士なのかもしれない。この二人。
「今日中に夜衣斗さんをここから出したかったんですけど…………」
しゅんとする美羽さん。
「隠れている不良のリーダーも見付からない上に、星波町にいる容疑者にも動きは今の所ないみたい」
っと現状を説明する飛矢折さん。
………まあ、予想の範囲内か………なら、
「……今日の夜に何も起こらなければ、犯人は星波町の外の人間って事になりますね。その場合は、明日、二人は何もしなくていいですよ」
その俺の言葉に、二人は不思議そうな顔をした。
「……安易な力を持って、その力に酔っている奴は、我慢なんか出来ない。そして、正義をうたってるなら、きっと、不良のリーダーが生き残っていると知らなくても、他の悪を断罪するでしょうからね」