間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』23
★夜衣斗★
俺の見解に、にやにやと笑う東山刑事と、驚いた顔をする団長。
「………黒樹君は、こう言う何かがあると予想していたんだ………」
ん?………何か団長の言葉が普通の言葉に戻ったよな………まあ、とりあえず、
「……ええ。俺が囮に使われているなって思った時、そうさせる何があるなって………」
そう言いながら、資料を手元に戻し、そこに書かれている名前を見る。
………おや?被害者は五人?………確か連中、六人いたよな……………なるほど………まあ、とりあえず………えっと………ああ、やっぱりそうか。
「……俺が囮に使われたって思った理由は他にもあって……」
「他って?」
「……行動が早すぎるんですよ。昨日の夜に事件が起こり、発覚したのは、今日の朝でしょう。それなのに、昼過ぎには、もう被疑者を決め、任意同行を求める」
「……確かに早いわね」
「………つまり、そこには理由がある……っで、考えてみると、今日は土曜日です」
「土曜日?」
「ええ、明日の日曜日は、星波学園の生徒の半数以上が、容疑者となる学生達の半数が、星波町からいなくなります」
団長に資料にある不良グループにいじめられていたとされているリストを見せる。
そのちょうど半分ぐらいの生徒が星波町以外の現住所。
「彼らの誰が犯人かは分かりません。全員が星波町にいる平日に、彼ら全員に張り込むのは、普通の人間なら平気でしょうが、相手が武霊使いとなると人員が足りないでしょう。………警察にそれだけの武霊使いがいれば、自警団が結成される必要性はありませんからね……だから、今日、少々不自然に見えても、俺を容疑者にする必要があった。………もし、今日明日、星波町に住んでいる本当の被疑者達の誰かが動けば、それでよし。動かなければ、月曜日から残りの被疑者達に張り込めばいい。………そんな所でしょう?」
「おお!凄い凄い」
と言いながら、ぱちぱちと手を叩く東山刑事。
「まさしくその通りだよ。いやいや、噂以上だね、君は」
そう言って、東山刑事はにやりと笑い。
「そこまで分かってるなら手間が省けるよ。どう頼もうかちょっと悩んでた所だったからね。うんうん。助かるねぇ〜」
「頼む?何をだ東山」
………団長。また男言葉に戻ってる………忙しない人だ。
「決まってるじゃない?囮として、しばらく警察署に『泊まって貰う』って事」